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動き出した「医療事故調査制度」の内容と
医療機関に期待される実践的取り組み

関西医療福祉通信 冨井 淑夫

小規模医療機関等は、原因究明に外部の支援を得ることも可能

 第三者機関が医療事故の原因究明と再発防止を図る「医療事故調査制度」(通称、事故調)の創設を盛り込んだ「地域医療・介護推進法案」が昨年、6月17日、参議院厚生労働委員会で可決。翌18日の参議院本会議で成立した。同法案により医療法の一部が改正され、医療機関(病院、診療所、助産所)は治療中の患者が予期せず死亡した場合に、第三者機関の「医療事故調査・支援センター」(以下、同センター)に報告することが義務付けられた。
 事故調導入の検討が始まったのは、1999年に起こった「都立広尾病院事件」を始め、基幹病院や大学病院等で医療ミスが相次いで発覚し、患者・家族の側に医療不信が高まったのが契機と言える。「都立広尾病院事件」では管理者である病院長が医療ミスの疑いを知りながら24時間以内に警察への届け出を怠ったとして、医師法違反に問われて、2004年4月に最高裁で有罪判決が確定した。これらの医療事故問題はメディアで大きく報じられて、世論の関心を高めることとなった。事故調の法制化には患者側・医療側で議論が重ねられて、様々な懸念や異論も噴出し、意見調整に手間取った。その間、自民党から民主党への政権交代による方針転換等、様々な紆余曲折もあって、今回の実現に至るまで15年間もの歳月を要することとなった。
 同制度の骨格としては、医療機関は診療行為に関連した「予期せぬ」死亡事故が発生した場合には、まず遺族に十分な説明を行った上で同センターに届け出ると共に、必要に応じて助言を求めつつ、速やかに院内調査を実施して、当該調査結果について同センターに報告する。院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合等、遺族または医療機関から調査申請のあったものに対しては、第三者機関である同センターが調査を行っていくという仕組み。同センターは調査内容を分析して、再発防止のための啓発活動も行っていく。
 院内調査に関して医療機関は事故調査委員会を設置しなければならないが、その際に中立性・透明性・公正性・専門性が担保されているのかが最も重要なポイント。要するに医療機関は同センターに届け出た上で、自ら調査した結果を、遺族と同センターの双方に報告すると言う、二段構えの体制作りが肝要になる。
 事故調創設に関して医療事故問題に詳しい弁護士の外山 弘氏(外山法律事務所所長)は、「確かに十分に詰められてはいない問題も残っているのだが、個人的見解として「医療安全」と「医療の質」向上の観点から、これだけの法案が完成したことを高く評価したい。ただ“予期せぬ死亡事故”と言う文言に限定したことに対しては、異論が出て来るのではないか」との考え方を示す。
 「医療の安全」と「医療の質」向上のためには、死亡事故だけでなく植物人間状態に至る等の重篤な後遺障害が生じた場合にも調査の対象にすべきとの意見の多いのは事実だ。
 外山氏は「医療現場では高齢患者が急増しているので、合併症等の様々な要因が複合的に作用して、亡くなられるケースも多い。これを単純に“予期せぬ”に当たらないとしてしまうと、医療機関が恣意的に調査対象から外すことも可能になる。要するに“予期出来た”死亡事故として、医療事故の対象から外れてしまう」ことを懸念するのだ。

医療事故調査における調査制度の仕組み