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STOP!The 院内感染

関西医療福祉通信
代表 冨井 淑夫(医療ジャーナリスト)

12年改定で加算1(400点)を新設 大規模病院では1億円超の増収も

 2007年4月の第五次医療法改正から「医療安全管理の義務化」が実施されることになり、医療の安全を確保するための具体的措置として、①医療安全 ②院内感染対策 ③医薬品安全管理 ④医療機器安全管理――の4つの体制確保が義務付けられることとなった。
 院内感染対策について、同改正で規定されたのは①院内感染対策指針の策定 ②院内感染対策委員会の設置 ③年2回程度の職員研修 ④その他(感染症の発生状況報告等)―の4点。
 こうした医療法上の環境整備に加えて、より実効性のある感染防止対策を組織的に推進していくために、2012年の診療報酬改定では、従来の「医療安全対策加算」に組み込まれていた感染対策防止加算(100点)を廃止。入院基本料の加算として新たに「感染防止対策加算1・2」(入院初日)として再編された(以下加算1・2に略)加算2は従来と同じ100点だが、加算1は400点の高評価である。
 加算1は地域の中核的な基幹病院、加算2はそれと連携する中小病院を対象にしたものと想定され、感染防止対策も大病院と中小病院との「連携」によって、地域全体で推し進めることを目指した点数誘導だ。この他、「加算1を算定する医療機関同士が年に1回以上、互いの医療機関で感染防止に関する相互評価を行った場合」の加算として、「感染防止対策地域連携加算」(入院初日・100点)が新設(以下、連携加算に略)加算1の400点に更に100点が加算され、新規入院患者1人に対して500点が算定出来る。大規模で平均在院日数が短く、新規入院患者数の多い高度急性期病院は、この2つの加算を取ることで「規模の経済」により、相当な増収が見込めそうだ。1000床近い某大学病院の試算では、感染対策に関する診療報酬項目だけで、年間1億円を超える増収になるという。筆者は昨年、いち早く加算1を届出した民間病院を幾つか取材した。ここでは感染管理の技術的なことには余り踏みこまず、主に各病院におけるICT(Infection Control Team――感染対策チーム)のオペレーションや診療報酬改定の影響等を中心に報告したい。

総看護師長から専従ICNへの配置転換 主治医のラウンド参加で精度の高い情報共有

 都市部に在るA病院は(一般199床)は、ISO「9001」の認証取得やNST(栄養サポートチーム)の稼働認定等、近年、「医療の質」向上に力を注いできた病院だ。同院では総師長を務めていたTさんが日本看護協会主催の認定看護師研修を修了し、昨年の3月から「医療の質・安全管理室」の感染管理担当師長に就任。専従のICN(Infection Control Nurse―感染制御看護師)としてICTの本格的な活動が始まり、条件をクリアしたことで4月から加算1の届出が可能になった。
 同院の院長は「当院では安全管理や褥瘡対策等も含めて、色んな課題ごとに職種横断的な取り組みを行ってきました。感染管理は医療現場で特に重要視してきた問題でもあり、熟練したICD(Infection Control Doctor―感染制御医師)はいたのですが、専門的な知識を有するICNの存在なくして感染対策チームも円滑に機能しないと判断して、T師長に専門的な研修を受けてもらったのです」と振り返る。
 T師長は総師長の頃から感染防止対策の取り組みは不十分だと感じており、ICTを活動させていくには、医療現場で24時間患者に対応する看護師が、感染管理の専門的な知識や技術を身に付けることが必要と痛感していた。看護管理と感染管理を両立させるのは大変で、専従のICNとして総看護師長から感染管理担当師長へと配置転換が行われたのだ。
 昨年4月から毎週、月曜日に各病棟へのラウンドを行っているが、ユニークなのは医師、看護師ら通常のICTメンバーの他に、事務部の診療補助課職員が同行している点だ。この職員がパソコンを帯同し、各診療科で電子カルテの患者データや画像を見ながら全員で個別の患者の状況を把握。情報を共有してICTメンバーと病棟スタッフとが投薬や治療の方向性を検討し、内容はその場で電子カルテに記載される。
 ICTラウンドの目的は、①抗菌薬の適正使用の推進 ②感染管理上、重要な耐性菌の検出について感染対策を現場で確認 ③血液培養陽性患者の把握 ④現場からの相談に対するコンサルテーション活動――としている。時々により参加メンバーが若干異なる場合もあるが、通常、各病棟ラウンドにはICN、ICD、前出の診療補助課職員、臨床検査技師、専従の薬剤師、後期研修医らが参加する。
 事前に各診療科からの感染コンサルトを受けて、各科で注意が必要な8〜10名位の患者についての相談を受けるのが通常の流れ。主治医から当該患者の病態を見ながら、現在の薬剤の使用法で良いのか、検査の進め方も従来通りで良いのかというコンサルトや、薬剤科から投薬のメニューが適切かどうかと言った相談が多く、事前にコンサルトの内容をリスト化した上で各科のラウンドを行っている。後に医局から対象患者の主治医もICTとの議論に参加したいとの要望が出て、T師長から主治医へ事前にメールを送付し、ラウンドの時間帯には可能な限り主治医にも参加してもらう。担当主治医の参加により、精度の高い情報を共有することができ、ICT活動も円滑に進めやすくなる。
 地域連携に関しては、加算2を届出した病院との合同カンファレンスを既に何度か開催しており、連携の段取りやスケジュール等について調整中。本来であれば連携を主導する加算1届出病院同士が役割分担を決めて、地域全体でどの範囲をカバーするのかを調整する必要が出てくるが、現状では加算1の条件クリアに向けて尽力している病院が多く、加算1同士の連携は明確にはなっているものの、加算1の病院同士、或いは加算1の連携体制を効率よく運用していくには、もう少し時間がかかりそうだ。同院のような中小規模の病院は感染管理の問題に限らず、大規模な高機能病院から学ぶべき事柄が多く、地域中核病院との連携強化は喫緊の課題でもある。
 T師長は「ICT活動はスタートしたばかりですが、きちんとサーベイランスを行って、ICTが関与することで、いかに改善されたかというアウトカムを明らかにして、病院職員に情報をフィードバックし、全職員に理解を得ながらチーム医療を進めていきたい」と 意欲的。T師長は就任と同時に毎月、「感染対策ニュース」という情報ツールを編集・制作し、全ての職員に対して新しい感染対策情報やICTの活動報告等を積極的に発信し、意識づけと情報の共有化に努めている。