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精神科病院における院内感染対策
 (その5:冬季に留意すべき二大院内感染症、ノロウイルスとインフルエンザの感染対策のヒント)

財団法人創精会 松山記念病院
山内勇人、白石麻子、遠藤美紀、戸村美名子、佐伯真穂

1.両者の感染対策上の相違点と共通点

 院内感染対策には「標準予防策」と「感染経路別(接触・飛沫・空気)予防策」とがあります。「標準予防策」とは患者さんの便、血液などの体液すべてを感染性があるものとして捉え、手指消毒を始めとして、手袋・ガウンなどを適切に日常業務の中で用いることが前提であり、これがきちんとできていないために、院内感染が起きている場合が多いと思います。
 しかし、この「標準予防策」を持ってしても不十分で、さらに感染経路別の対策が必要な病原菌があります。このうち接触感染対策が必要な病原菌の代表的なものがノロウイルスになります。ノロウイルスの場合は、罹患患者の便や吐物に触れる直接的な接触、もしくは、それが付いている手すりなどを触る間接的な接触でも高率に感染を起こし発症します。しかも、アルコール消毒に抵抗性であることから、最近よく使用されている速乾性アルコール手指消毒剤では不十分ということになります。言い換えると、アルコール製剤が有効なMRSAやO157よりも対策がずっと難しい訳で、日頃から「標準予防策」が行えていない施設はノロウイルスに対して無防備な状態であると言っても過言ではありません。しかも、自己衛生管理が難しい患者さんを抱える精神科病院での対策は、非常に困難なものとなるのです。また、嘔吐物などが乾燥して空気中に舞うと、それを吸い込むことでも感染(飛沫感染)を起こすので、マスク着用などの「飛沫予防策」も必要となります。
 一方、インフルエンザでは、ウイルスを多量に含む唾しぶきが、のどや鼻の粘膜に直接付着することにより感染する飛沫感染が主たる感染経路となります。従って、飛沫予防策がワクチン接種に加えて極めて重要になります。直接、唾しぶきがかからないように工夫すだけで、感染拡大防止が可能となるのです。
 インフルエンザ、ノロウイルス、いずれも市中での流行期には、家庭や施設への持ち込みを完全に防ぐことは難しく、一度病原菌が施設内に持ち込まれると感染力の強さから、その制御は極めて困難となります。患者や病室単位での通常の感染制御の手法では院内流行を防ぐことは困難となります。
 そこで、この項で提案したいのが、「症候サーベイランス」の実施と、「フェーズ」を用いた感染対策です。