Home > チーム医療活動 > 精神科病院における院内感染対策 (PAGE 1)

精神科病院における院内感染対策
 (その3:「閉鎖的環境」を感染対策に最大限に生かす工夫)

財団法人創精会 松山記念病院
山内勇人、久世由姫、藤原真由美、閏木由美子、勝間敏子、戸村美名子

1.「閉鎖的環境」は感染対策に不利か有利か

 院内感染対策のハード面で一般科と最も異なる点は、精神科病院は閉鎖的環境にあるということだと思います。
 病棟の出入りに始まり、病棟内においても、感染伝播の温床となるドアノブが数多く存在します。スタッフや入院患者により、感染症が一旦病棟内に持ち込まれると、自己衛生管理が不十分な患者が多いために、病棟内での感染拡大は必至です。さらに、病原菌が病棟外にも持出され、病院全体に感染が拡大してしまいます。
 しかし、感染対策上、負の要素である筈の閉鎖的環境は、対策の展開によっては「感染対策上のバリア」にもなり得ます。病原菌を、「病棟内に、スタッフルーム内に、持ち込まない、持出さない」取り組みを行うことにより、閉鎖的環境を「伝播の温床」から「感染拡大防止の要」に変えていく視点や対策が大切だと思います。

2. 閉鎖的環境を「感染拡大防止の要」とするために

 最も基本的で不可欠な院内感染予防策である手指衛生の遵守に取り組むことが重要です。スタッフは勿論のこと、入院患者においても、日常可能な範囲で取り組むことが大切だと思います。洗面所には液体石鹸と使い捨てペーパータオルを配備し、随所に速乾性アルコール製剤を適切に配備することが基本となります。
 しかし患者層によっては異食行為などもあり、これらの常設が危険な場合があります。そのような場合には、速乾性アルコール製剤を上手に用いることがポイントとなります。例えば、閉鎖病棟では病棟の出入りを患者・面会者ともに管理できる訳ですから、病棟の出入口でスタッフ管理下に速乾性アルコール製剤による手指消毒を行うことは可能であり、「病棟に持出さない、持ち込まない」という観点からも非常に効率的な方法になります。アルコール製剤はスタッフルームから目の届く出入口に設置しておくのが望ましいと思いますが、それでも危険な場合には、スタッフステーション内においておき、必要時にスタッフが持出すのが良いでしょう。
 また、作業療法などのように多病棟の患者が交差する場所でも、施行前後での手指消毒を併用されてはいかがでしょうか。適所に手洗い設備がある施設は理想的です。
 また、食事の前に普段から手洗いを行う習慣をつけること、さらに手洗いが不十分であることも考慮して、速乾性アルコール製剤による消毒を併用することが効果的かと思います。担当者を決めておき、配膳時の待ち時間などにされてはいかがでしょうか。
 なお、共有タオルの使用は行うべきではありません。院内感染の大きな原因となりますし、一旦院内感染が発生した場合には、施設側の管理責任を問われます。コストを考えてどうしてもタオルを使用するということであれば、タオルは個々の患者専用とし、乾燥した状態で保管すること、少なくとも一日一回は交換することは最低限必要なことだと思います。使い捨てペーパータオルの配備が望ましいと考えますが、異食の危険性やランニングコストを考えると、エアタオル設置も一考の価値があります。夜間の騒音が気になるような病棟では、夜間は電源を外しておけばよいでしょう。

3.「鍵」を洗ってますか?

 精神科では、日常業務の中で頻回に行う、「鍵を用いてドアを開閉する一連の動作」を1行為と捉えるべきだと思います。細部まで行き届いた環境整備や速乾性アルコール製剤による手指消毒を併用すると同時に、鍵自体の汚染を管理することは、手指衛生の遵守を行う上で不可欠であると考えます。
 私どもの施設で、日常業務に用いている鍵のスタンプ培養実験にて、病原菌が付着していることが証明され、ハンドソープを用いた洗浄により付着細菌が除去し得る可能性が示唆されました。水洗浄もある程度の効果は期待できますが、ハンドソープを用いた丁寧な洗浄を鍵洗浄の基本にすべきであると考えています。
 鍵の汚染を管理する方法としては、(1)鍵の付属物として不要なものは付けない、(2)同じポケットでの保管を徹底、(3)そのポケットは鍵専用として他の物を入れない、(4)ハンドソープでの鍵の洗浄を、汚染時以外でも勤務終了時には行うこと、などを啓発して習慣づけていくことが大切だと考えています。
 鍵の管理は他の対策と同じく、完璧を目指す必要はありません。「鍵は院内感染を媒介する可能性がある」という視点を持つこと、そして日常からできる範囲で習慣付けて置く事で、有事の際の対応が行い易くなるのです。