Home > チーム医療活動 > 医療安全管理運営のポイント (PAGE 1)

医療安全管理運営のポイント

聖路加看護大学 精神看護学 講師  高橋恵子

はじめに

 近年、「医療安全管理」、「リスクマネジメント」をテーマとした書籍や講演会をあちこちで目にします。しかし、よく考えてみれば医療安全管理が注目を浴びたのは、つい数年前の出来事なのです。どうして、急に医療安全管理について、問われるようになってきたのでしょうか。その契機を振り返りながら、医療安全管理を運営するポイントについて述べていきたいと思います。

医療安全管理が注目されはじめた契機

 医療安全管理が注目されはじめた事の発端は、1999年に特定機能病院で患者の取り違え事故が起き、それが大きく国民に報道されたことがはじまりです。その後も、公立病院での消毒剤の誤注入事故、さらに内服薬の誤薬事故に関連する事故の報道が相次いで続きました。きっと、皆さんも記憶していることだと思います。安全で信頼のおけると思われていた医療機関での事故を契機に、国民の医療安全に対する目が非常に厳しくなり、医療の安全を求める声が大きくなってきました。また、米国でも、IOM(国立医療研究所)のレポートが紹介され、同様の問題があることが明らかになり、医療安全管理について注目されるようになったわけです。

精神科医療における医療事故

  医療事故の訴訟事件の数は、年々増加しています。また、医療事故で報告される事例の多くは、注射・内服などの薬剤に関する事故、機器類操作に関連する事故、チューブ・カテーテル関連の事故、移動時やベッドからの転倒・転落が挙げられます。では、精神科医療において医療事故の推移はどのように変化し、また、どのような医療事故が起きているのでしょうか。日本精神科病院協会では、会員病院で起こった事故事例を集積し、事故の状況を把握し分析を行っており、医療事故の報告は任意ですがおおよその精神科医療の傾向を把握しています。それよると、精神科医療事故報告件数の年次推移は、1994年は1年間に100 件程度だったものが、2002年には270件と約3倍近くに増加しています。そのうち、何らかの賠償請求をなされている事例も徐々に増加し、報告事例の約 20%を占めています。1994〜2002年間の精神科医療事故の類型別割合は、転倒・誤嚥による窒息といった不慮の事故が最も多く、次いで自殺、患者間の暴行・傷害・致死、誤薬などを含む医療行為に伴うもの、突然死、身体合併症という順となっています(表1)。転倒、窒息などの不慮の事故は、1994年に比べると2002年では4倍強に激増しています。

表1.精神科医療事故の類型別割合(1994年〜2002の合計)

  • 転倒・誤嚥による窒息といった不慮の事故 (32%)
  • 自殺 (28%)
  • 患者間の暴行・傷害・致死 (16%)
  • 誤薬などを含む医療行為に伴うもの ( 6%)
  • 突然死 ( 6%)
  • 身体合併症 ( 5%)
  • 第三者への暴力・傷害・致死 ( 2%)
  • 法・規則に関するもの ( 2%)
  • 自傷行為 ( 1%)
  • 離院目的の飛び降り、傷害・致死 ( 1%)

(坂田三允総編:精神看護エクスペール リスクマネジメント,
34−35,中山書店,2004.一部修正)