Home > チーム医療活動 > クリニカルパスと保健医療制度改革(PAGE 1)

クリニカルパスと保健医療制度改革

国立精神・神経センター精神保健研究所
社会精神保健部 伊藤 弘人

1.はじめに

 最近ではクリニカルパスの名前を知らない臨床家は少なくなりました。精神科医療施設において、クリニカルパスを取り入れようという試みもなされていて、e―らぽーるにも多くの活動が蓄積されつつあります。
 それでは、クリニカルパスが、わが国の保健医療制度改革の中でどのような位置づけになっているかご存知でしょうか。医療法や診療報酬の中でもクリニカルパスは注目されています。なぜ制度的に期待されているのかを知ることは、今後の活動の方向性を確認するためにも意味があると考え、今回はクリニカルパスと保健医療制度改革について、まとめます。
 まず、クリニカルパス(クリティカルパス)が開発されたアメリカと、わが国では、導入の目的に大きな違いがあることからはじめましょう。アメリカでクリニカルパスを開発した目的は、ずばり、在院日数の短縮です。

2.クリニカルパス開発導入の目的の日米の違い

クリニカルパスの目的

 アメリカでは診断別定額支払方式(Diagnostic Related Groups/ Prospective Payment System: DRG/PPS)への医療施設側の対応ツールとして、クリニカルパスは活用されてきました。DRG/PPSは、診断群ごとで1入院あたりの支払い金額が決まる支払方式です。医療施設は利益を最大にするために、患者にかかる支出(コスト)を抑えようとします。入院にかかる支出に最も関連するのは一般に在院日数ですから、在院日数短縮のツールとしてパスが用いられました。「クリティカルパス手法」は、無駄な時間をなくす工程管理手法であり、米国ではその本来の目的でパスが活用されてきたのです。
 アメリカとは対照的に、わが国では医療の標準化のためにパスは導入されました。どのような医療を提供しているのかを言語化し、その内容を改善していくいわば臨床での「地図」の役目を果たすようになっているのです。この地図は、チーム医療の推進につながり、また最近ではパスを使って適切な支払方式などの保健医療制度改革に活用することもできるのではないかとも考えられるようになってきました。
 アメリカでは在院日数短縮のツールとしてクリニカルパスは開発導入されましたが、日本では日常の治療・ケアの内容を言葉にして、パスを使ってチーム医療を進めようというのがパス導入の目的なのです。加えて、この活動がわが国で実態として広がっているので、その内容を診療報酬等で評価しようという考えが二次的に注目されつつあるのです。米国では保健医療制度改革の要請から、日本では臨床での要請からクリニカルパスが導入されたという点が、最も大きな違いといえます。