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精神科退院パスの導入と展開

財団法人精神医学研究所附属東京武蔵野病院
小林啓之

1.はじめに――精神科退院パスの導入まで

 ここ数年で精神医療にも地域主導の波がきていることは周知のとおりですが、結果的に病院が急性期管理に特化していく一方で、急性期を脱したあとのフォローは地域に丸投げされる感があることも否めない事実です。実際に精神科病院が急性期に傾斜していくことによって、リハビリテーションなどの社会復帰の準備にやや人的資源が投入されづらくなっているという実情もあり、その結果まだ生乾きの状態で地域に戻されるというケースが少なくありません。この事態は医療が一見地域主導型にかわったような錯覚をおこさせますが、もしまだ十分に症状が管理されていない状態で社会復帰だけがお題目のように唱えられているだけだとしたら、場合によっては医療の質そのものを下げることにさえなりかねません。

 当院ではこうした現状をとらえて、病院での治療から地域へのリハビリテーションと向かう際に、その移行をより円滑にするようなクリニカルパス――精神科退院パス――の開発を2006年から開始しました。当院は2棟の精神科スーパー救急病棟を抱え、入院患者数は日に5〜10人と全体に急性期管理に特化しつつある病院ですが、いきおい症状管理にばかり目が向けられるようになると、社会機能の回復や対処方法の獲得などといった適応能力を上げるような関わりがおろそかになってしまいます。病院スタッフの多くはこの現実に気づきつつも、連日入院してくる急性期患者さんの管理に追われる日々で、十分な対応ができずに終わっていました。そこで私たちは、症状管理がある程度なされてから退院に向かうまでの道程(パス)を再度検討し、そこで何が可能か、あるいは何が必要なのかを整理するに至りました。

 その結果、退院という治療側にはともすると一見なにげない境界が、患者さん本人にとっては『医療モデル』から『福祉モデル』への大きな転換を強いられている、という事実を私たちは再認識することになりました。これによって、『福祉モデル』への移行をいかに円滑にしていくかを退院前から準備していくということが、今回のクリニカルパス作成に際しての主要な目標となったのです。