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急性期治療病棟に入院した精神障害者への退院支援クリニカル・パス

宇佐美しおり(熊本大学医学部保健学科),岡田俊(京都大学)
矢野千里(菊陽病院),樺島啓吉(菊陽病院)

1.はじめに

 海外において、マネジド・ケアや疾病管理(Disease Management)の医療への導入は、医療費を削減し、精神障害者の短期入院、地域での生活を促進し、クリニカル・パスを発達させた。日本において、厚生労働省は、精神病院の機能分化、精神障害者の短期入院の促進、病床数の削減による精神障害者の地域生活の促進を試みようとし、ケア・マネジメントや訪問看護を推進している。これらの状況において、著者らは、精神障害者の再入院を抑制し、障害者の地域生活を促進するためのケア・プロトコールの評価に関する研究を行ってきた。そこで今回、クリニカル・パスに関する海外の文献および著者らの関西および九州管内での研究結果をもとに、①急性期病棟に入院した患者への退院支援に関するクリニカル・パス、②入院が3ヶ月以上になりはじめた精神障害者への退院支援クリニカル・パスを紹介する。さらに、パスの紹介に加えこれまでの研究をもとにしたプロトコールの内容も含みながらパスを紹介していく。

2.急性期治療病棟に入院した精神障害者への退院支援に関するクリニカル・パス

 これまでの研究において、再入院、再発・再燃に関する要因として、治療に関する要因(服薬・外来受診の中断)、患者のセルフケアに関する要因(症状管理ができない、活動と休息のバランスがとれない、人とのつきあいに関するバランスがとれない)、家族に関する要因(家族が症状悪化の兆候に気づけない)、地域生活支援の不足があげられている(参考文献1,2)。海外においては、急性期は入院後1-2日、安定期3-9日、回復期10-13日、退院期14日以上として分類されていることが多い(参考文献3)。しかし日本においては、急性期の段階での薬物治療の展開が異なり、ケース・マネージメントが不足し、退院後の多職種のかかわりの限界、診療報酬における病院の収益が入院後3ヶ月以内の退院、で設定されていることから、海外のパスをそのまま日本の精神医療に導入するには限界がある。そこで、著者らは個別性による差はあるものの、急性期を入院時から2-3週間、安定期を4-5週間、回復期を6-8週間、退院期を9週間以上と設定し、急性期ケア・プロトコールを作成し、ケアを実施し、その評価を行った。急性期ケア・プロトコールの実施前と実施後の地域での生活期間に若干差はみられたが、有意差はみられなかった。しかしケア・プロトコール実施群に患者および家族のケア満足度に差がみられ(参考文献4)、入院中の入院期間は医療者の意識との関連がみられていた。またプロトコール実施前と実施後の患者の病状およびセルフケアに差はみられなかったが、患者の地域での生活期間の長さは、家族の患者の病状への対処能力、家族がサポート・ネットワークを有していること、セルフケアにおける患者の服薬・症状管理の力、病状において衝動的な行動が少ない、ことが関連していた(参考文献5)。これらの結果をもとに別紙のようなパスを作成した。pdf図1(185KB)