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精神科クリニカルパスを広めるための体制作り

財団法人精神医学研究所附属東京武蔵野病院
佐藤雅美

1.はじめに

 クリニカルパスという言葉は精神科医療界にも随分浸透しています。しかし、実際にパスを開発・推進しようとすると、標準化という考え方や、複数の目標を時間軸に沿って同時に管理するという方法に戸惑うスタッフは多いものです。また、パスに対する無理解・誤解により、パスについて知ることさえ拒否される場合もあるのが現状です。
 今回は、困難に直面したときの打開策や、パスを広めるための体制作りにあたって検討しておくと良いことについて、当院の例を紹介しながら考えてみます。

2.精神科でパスを広めようとする際に問題となること

 精神科においてパスを取り入れることの難しさはこれまでも指摘されていますが、特に下記の問題は攻略に手間取るかもしれません。

1)患者の個別性とスタッフの個別性

 「精神科の患者さんは個別性が高いからパスは使えない」、「パスで治療するのは乱暴なやり方だ」と言う人がいます。しかし、他領域に比べて人員配置の貧弱な精神科で、全ての患者に対し平等に、個別性に合わせた治療・ケアを十分に練りあげて提供することは不可能です。また、いつまでも手厚い治療・ケアを続けることがかえって回復を妨げることもあります。重症患者や病状変化の激しい患者に対応するのが精一杯で、"落ち着いている"患者には援助が行き届かなくなってしまうこともあります。
 精神科ではどの患者にも基本的に行わなければならないこと(標準的な医療)が不明確なため混乱が生じやすいのですが、"落ち着いている"患者に適した標準的な治療・ケアのパスを適用することは、医療の質保証ではあっても、個別性の無視にはあたりません。基本的なニーズに対してはパスで、個別性の高いニーズには個別性に配慮した治療・ケアをあわせて行なえばよいのです。
 標準的な治療・ケアで援助できる患者にはパスを適用し、卓越した技を発揮することが要求される患者に十分なリソースを割けるように業務にメリハリをつけることが、全体的な医療の向上につながります。
 上述のような誤解に加え、"個別性"が問題とされるときは、感情レベルの抵抗が根強くあることに配慮しなければなりません。自分の行ってきた治療・ケアが他者と比較されたり、批判されるのではないかと恐れたり、医師の場合は治療に関する裁量権が奪われるのではないかと警戒している時があります。"個別性尊重"という主張が、実はスタッフの個別性の尊重を求めるメッセージである場合も少なくありません。