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急性期うつ病のクリニカルパス

東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
小山 明日香

1.急性期うつ病のクリニカルパス

 クリニカルパスを作成するためには、どのような治療・ケアを、どの時期に、誰が行うかをよく検討する必要がありますが、そこで気になるのは「他の病院ではどうしているのか?」ということではないかと思います。

 そこで今回は、H15年度厚生労働科学研究費補助金(障害保健福祉総合研究事業)「精神科急性期病棟・リハビリテーション病棟等の在り方に関する研究」(主任研究者:国立精神・神経センター武蔵病院 樋口輝彦 院長)から、急性期うつ病のクリニカルパス調査の結果の一部を報告します。この調査では、ある急性期うつ病患者さんの事例を提示し、そのような患者さんに対してどの時期にどのような治療・ケアを行っているかを、クリニカルパス形式の調査票※を用いて調査対象病院の医師に尋ねました。すでに実際にパスを使用している場合は、パスを提出していただきました。ここで紹介するのは調査に協力いただいた36病院の結果です。

 ※調査票は、縦軸に「検査・診断」「薬物治療」「身体療法」「精神療法」「看護ケア」「行動範囲・場所」「生活療法」「その他」「アウトカム」の9つの軸を設定し、横軸を時間軸としました。

2.行動拡大と治療検討時期

 急性期うつ病の患者さんの場合、希死念慮がある場合が少なくないことから、安全の確保には特に注意する必要があります。しかし、入院は患者さんの安全を確保することだけが重要なのではなく、退院後社会生活にスムーズに移行するための練習の場でもあります。そこで重要な指標となるのが行動拡大です。そこで、ここでは行動拡大に着目して考えてみたいと思います。

 図1では,36病院の行動拡大の推移と治療の時期がわかります。色で示した部分が行動範囲、文字がその時期に行われる治療内容を表します。大体どの病院も、病室内静養か病棟内静養から開始し、2〜3週目頃に病院内まで範囲が拡大し、2〜5週目頃に外出が開始しています。外泊が開始するのはおよそ4〜8週目です。外泊をどれだけの期間行うかは、病院によって様々でした。

 また、治療と行動拡大をあわせて考えるのも重要なことです。この結果では、多くの病院で行動範囲が病院内の時期に作業療法が開始され、外出開始の頃に服薬指導が開始され、外泊開始直後もしくは開始からしばらくたった頃に服薬自己管理が開始されています。安静の時期を過ぎ、患者さんの行動が少しずつ広がってきた頃に作業療法を開始する、というのは理にかなっています。また、外泊できちんと服薬の管理ができるように外泊前から服薬指導を行うことや、退院までに自己管理ができるようになるために外泊と並行して服薬自己管理を開始することは、極めて自然な流れといえます。このように、パス形式にしてみると、患者さんの治療・ケアの流れがわかりやすくなります。また、なぜこの時期にこの治療が必要なのかを再確認することができます