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福祉ホームB型におけるクリティカルパス開発の試み

 

西浦信博(医療法人西浦会 京阪病院 理事長 院長)
古池啓孝(医療法人西浦会 福祉ホームB型『イクス』施設長)
三浦康司(医療法人西浦会 保健福祉部)

はじめに

 我が国の精神保健福祉施策1)が大きな転換期を迎えようとしている今日、当法人においても精神科病院を中核として精神障害者生活訓練施設(平成9年)、地域生活支援センター(平成12年)、福祉ホームB型(平成14年)等を開設して、精神障害者の社会復帰を推進2)3)してきた。その福祉ホームB型『イクス』についても開設して既に3年が経過した。
 その間利用者は延べ21名を数え、21名の平均年齢は61.0±11.5歳であり、65歳以上は43.0%を占め高齢者が多いことが特徴である。うち4名は退所し単身生活に至っている。福祉ホームB型開設当初は利用者への具体的支援はどうあるべきか苦慮していたが、試行錯誤を繰り返しながらこれまで様々な支援活動をすすめてきた。今回これらの試みをもとに利用者の特性や地域性を考慮した福祉ホームB型のクリティカルパスを開発したので報告する。

クリティカルパス開発の経緯

 開設当初より福祉ホームB型利用者の支援のあり方を模索していたが、各利用者が退所するまでに何をすべきか利用者とともに話し合い、社会復帰へ向けた具体的目標を検討してきた。その目標を含めて現在できていること、できていないことを明確にする「個別支援計画」を実施しはじめた。(資料1)この計画はあくまでも個人ベースの計画書であったが2年間継続して実施していくなかで、それぞれの支援計画に共通した事項が見出された。とくに退所前の支援については家族や他機関との連携に共通性が認められたことにより、当施設独自の支援ツール「福祉ホームB型クリティカルパス」の開発に至った。

福祉ホームB型「イクス」のクリティカルパスの実際

 当施設では利用者一人一人の特性に応じてどの職員でも共通の支援が提供できる体制を目指している。当施設のクリティカルパスは前述のように独自に実施してきた「個別支援計画」を中心に開発されている。このパスにおいては時間軸については厳格に規定せず、それぞれの段階(ステップ)を一つ一つ達成していく方式を採用している。この方式により、横軸としては利用者が過度な「時間的プレッシャー」を感ずることなく課題に集中できるようになる。また達成の度合が不安定であれば、前のステップに戻ることも、条件がよければステップを一つ飛ばすこともでき、柔軟な支援計画を構成することが可能となる。クリティカルパスの縦軸には【支援内容】を各ステップごとにまとめ、その支援時の問題点などを[職員間のカンファレンス]で確認を行い、[保証人・家族]への働きかけを経て次のステップへ進めるか[評価]を行う形式としている。さらに諸条件が整って途中で退所するケースにおいても、退所段階でのステップまで進めば次の支援サービス主体に支援内容を引き継ぐことは可能な形態となっている。(資料2)

今後の課題

 今回当施設開設当初から実施してきた「個別支援計画」をもとに、福祉ホームB型のクリティカルパスの開発を試みた。一昨年当法人の生活訓練施設においてクリティカルパスを開発4)し検証しながら改良を進めているが、今回の福祉ホームB型『イクス』のクリティカルパスについても今後はまず症例を重ねていくことが必要である。そして各ステップの移行について、現状では職員間のカンファレンスで決定しているが、今後は達成具合を評価するチェックリストや全体的な「目安」となり得る評価指標の開発が望まれる。また今後退所者が増加することによって地域生活への適応に関する具体的課題を再度確認し、退所後の社会資源の活用も含めクリティカルパスに反映させていくことが必要であると考えられる。さらに将来的には精神保健福祉施設の再編成を見越して、福祉ホームB型単体のクリティカルパスにとどまらず、既に開発し検証・改良を続けている精神科治療病棟パス5)や生活括訓練施設のパス4)との関連をもたせ、病院から社会復帰施設を経て地域社会へ移行するステップ3)に沿った「精神科連携パス」の開発も必要となるであろう。
 今後、この福祉ホームB型クリティカルパスを多くの利用者に適用し問題点を検証しながら、利用者の社会復帰の支援をすすめていきたい。

参考文献
  1. 厚生労働省障害保健福祉部:今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案):2004.
  2. 西浦信博、三浦康司、三鍋果実、大里祥、古川清和:生活訓練施設・福祉ホームB型の実践を通した精神障害者の社会復帰に関する一考察:日精協誌22(8):35-43、2003.
  3. 西浦信博、三浦康司、笹岡晋二、大里 祥、古池啓孝、古川清和:精神障害者社会復帰施設の役割・機能に関する調査研究:日精協誌24(7):71-74、2005.
  4. 西浦信博、大里 祥:精神障害者生活訓練施設におけるクリティカルパス開発の試み:http://www.e-rapport.jp/s_torikumi/;2003.
  5. 古田順子、浅芝眞右、皆川栄治、福森由紀子:精神科治療病棟におけるクリニカルパス:
  6. 日精協誌23(別冊):183、2004.