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関西で開催された精神科医療の質に関する多施設相互評価会議について

社会医療法人 北斗会 さわ病院
澤 温

精神科医療と行動制限

 行動制限は自由と対立するもので、人間に限らずすべての動物に拒否される行為と言える。特に自由の確保の戦いの歴史を歩んできた西欧諸国では行動制限に対する感覚は敏感である。行動制限は人間が本来保証される人間の自由に関わるものであり、歴史の中で常に戦われてきたものである。法の下でこの自由を制限することが許されているのは警察官などと、精神科医療において精神保健指定医の指示の下においてのみである。この警察官などと、精神科医療においてもこの自由の制限は常にモニターされまた不服を申し立てる権利が保障されなければならない。
 精神科治療の急性期において、患者の興奮下で患者に近づいて精神症状を把握したり、精神療法的に介入したり、必要に応じて薬物療法を行うが、この時患者にもスタッフにも安全に確実に迅速に医療が行われるには最も行動制限の厳しい身体拘束もやむを得ない。しかし、日常の現場では、その最小化に努力しているつもりでも、いつしか安全が優先して過剰防衛的拘束を行ったりすることがあるのは否めない。必要なのは、アメリカ精神医学会の推奨する15分毎のチェックでも、WHOの推奨する30分毎のチェックでも、精神保健福祉法で求められている1日2回以上の診察でもない。いつも「まだ拘束は必要か」を繰り返し評価し、その評価のための材料を患者に接するたびに考えることである。この材料には、患者に対し、拘束の必要性、一部解除する時協力してくれるかを説明しその理解を確認すると共に、実際解除して協力度を確認しその人のcompetenceを評価することが必要である。いわゆるマネジメントサイクルのPDCA(Plan-Do-Check-Act)を常に回し続けることである。

eCODO成立の経緯

 この努力をしていてもその結果が正しいのかはなかなか分からない。この時独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の精神保健研究所 社会精神保健研究部 伊藤弘人部長が中心になって作成したeCODO(Coercive measures Database for Optimization)データがより大きな指針を与えてくれる。
 eCODOは、2006年から医療の質に関するデータ活用の基盤整備の研究を開始し、開発したものである。eCODOの第1号は,2009年5月から全国の救急入院料病棟を有する病院からNCNPに定期的に行動制限に関わるデータを集めるものであるが、2011年6月には,NCNP内にeCODOセンターサーバが設置され、eCODOセンターサーバは,データの集約・分析・フィードバック機能を有している。
 定期的に集められた行動制限に関わるデータを集計しフィードバックすることにより、全国におけるその病院の位置を評価できるシステムである。これは拘束に限らず、表1に示すような項目も登録されるので、自己の病院の特徴を多面的に見ることができ、他の施設と何が違うのかを評価する中でさらに改善をする意欲が増し、行動制限がさらに減少することを狙っている。現在データをbatchで送る形であるが、電子カルテが広がる中で、入力も簡易になり、さらにデータもリアルタイムで送れるようになってきて今後の発展が期待できる。
実際の流れについて図1に示した。

表1 eCODOで求められる調査項目
【入棟時】
・入棟時GAFスコア
・一般科定期的フォローの有無
・主病像
・自殺念慮の有無
・自傷の有無
・他害の危険の有無
・アルコール・薬剤の依存・乱用の有無
・服薬状況
・身体合併症の有無
・静脈確保の有無
・入棟時BPRS(18項目)
【退棟時】
・退棟時GAFスコア
・死亡退院か
・院内自殺(完遂)か
・退院時副診断の有無
・身体合併症の有無
・臨床全般改善度CGI
・自傷インシデントの有無
・暴力インシデントの有無
・無断離院の有無
・薬剤による有害事象の有無
・治療関連合併症
・嚥下性肺炎の有無
・肺血栓塞栓症の有無
・転倒・転落の有無
・褥瘡の有無
・その他の重大インシデントの有無
・退棟時BPRS(18項目)

図1 eCODOシステムの概要