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包括的暴力防止プログラム(Comprehensive Violence Prevention and Protection Programme: CVPPP)について

信州大学医学部保健学科 看護学専攻 広域看護学講座 下里 誠二

CVPPPとはなにか

 包括的暴力防止プログラム(Comprehensive Violence Prevention and Protection Programme: CVPPP)は2004年「包括的暴力防止プログラムトレーナー養成研修」として研修が始まりました。医療の場で起こる暴力や攻撃性に対して適切に介入することはその場にいる全員を守るだけではなく、暴力が起こらないようにするために早期の介入が可能となることからその発生を予防したり、あるいはこのような事態が起こった後に生じるストレスや不快な感情を軽減させる効果があるといわれています。
 CVPPPは単に身体的介入技術としてのものではなく、攻撃的な患者にケアとして如何に適切に関わるかという治療的な視点でプログラムを構成し、リスクアセスメントの方法、コミュニケーション技術による興奮状態への介入法(ディエスカレーション)、身体的介入技法(チームテクニクス、ブレイクアウエイ法)、心理的サポート(ディブリーフィング)からなっています。その技術の習得については「CVPPPトレーナー養成研修」として4日間のトレーニングコースを設けており、誤った知識が伝達されないようにするため、このプログラムは包括的暴力防止プログラム認定委員会によって管理され、この4日間のトレーナー養成研修を受けた者だけが「トレーナー」として自施設内で他のスタッフに技術を伝えることが認められています。施設外の者にも技術を伝えるにはさらに研修を運営できる能力を身につけた「インストラクター」と認定される必要があります。2010現在インストラクターとして93名が認定されています。
 このプログラムの持つ意味はその理念にあります。このプログラムは身体介入技術を含むため、単に不穏興奮時の短期的な身体的介入の方法と誤解される面もありますが、このプログラムで最も重要なことは「攻撃的な患者に対してケアとしていかに患者に寄り添い、その怒りがおさまるように治療的に関わるかという視点から、安全で治療的な環境を守る」という理念です。不穏興奮状態にある患者さんに対して、人権を尊重し、援助者の立場としてかかわる(向谷地,2005)ためには常に「クライエント中心」というスタンスで関わることのできるスキルを身につけることが必要であり、介入するスタッフが適切な技術と自信を持って対応できるようになることでその場にいる当事者に目をむけるためのものと考えています。また対応するスタッフが高い技術を持っていることで、隔離拘束をしないですむ状況を作り出すことが可能になります。このことは行動制限を最少化しようとすることに役立ちます。欧米のガイドラインでもスタッフのトレーニングは隔離や拘束を少なくするのに有効な手段として挙げられています(NTAC,2005,NICE,2005)。CVPPPを開始して以来、受講者にとって介入への自信が増し(下里他,2005)、CVPPPの関わりが看護の関わりそのものであると感じ、自身の看護としての介入を見つめる機会となっています(下里・谷本,2008)。
 またCVPPPを利用するについては早期介入が可能になる、身体介入をしないですむ、けががなくなっている、男女を問わず利用できる、という利点(美濃・宮本,2007)があげられています。
 CVPPPでは暴力を「危害を加える要素を持った行動(言語的なものも含みます)で容認できないと判断されるすべての脅威を与える行為」として定義しています。暴力や攻撃性に対処しようとすることについてはリスクマネジメントの文脈でとらえることが重要であると考え(樋口,2006)、患者さんの尊厳を保った介入をするためのものです。

 

59(11.05.27)