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評価シートによる開放観察時間決定の取り組み

医療法人栄仁会宇治おうばく病院
看護部 大谷勇生,龍野都季

当院紹介

 当院は、稼動病床数572床で精神科救急医療・うつストレス疾患・認知症・精神科身体合併症に対応する精神科病床412床を有している。病院本体のほかサテライト診療所、介護保険事業所、自立支援施設(デイサービス・グループホーム・福祉ホーム・認知症老人グループホーム)をもち、精神障がいの方を包括的に支援する体制を整備している。
 研究対象病棟は、当院精神科救急入院料病棟1の53床の閉鎖病棟で、2009年10月に精神科急性期治療病棟1から精神科救急入院料病棟1に移行したものである。53床のうち27床が個室(保護室は21床)、2床が集中観察室、その他が4床室である。病棟の中心にはナースステーションの他、患者同士の交流、テレビ鑑賞や読書、病棟OTなどに使用することが出来るホールがある。保護室のうち8床は、自室の扉以外にホールとの間に施錠扉があり、ホールに自由に出入りすることが出来ないようになっており、その他の保護室は開放観察中であれば自由に自身の部屋とホールを行き来する事が出来る。保護室は2重扉になっており、患者が生活をする室内にはベッド・トイレが設置されている。各部屋に洗面台・生活具を置く棚を備えているが、これは中の扉を開放しない限り、患者が自由に使用出来ないようになっている。
 精神科救急病棟の年間入院者数は約400名で、平均在院日数は約45日である。
 入院形態の割合は、医療保護入院62%、任意入院24%、鑑定・措置・応急入院14%となっている。主な診療対象疾患は、統合失調症型障害圏・気分障害圏を中心に、神経症圏・認知症・アルコール薬物依存・摂食障害・パーソナリティ障害等であり、幅広く治療をおこなっている。

はじめに

 精神科において患者の安全確保・患者の病状安定・他患者への影響や迷惑行為防止を目的に、時には隔離といった行動制限をしなければならない。しかし、行動制限については、精神保健福祉法における最小限の原則にあるように、患者の症状に応じてもっとも制限の少ない方法により行わなければならないと考えられている。そのため治療スタッフは行動制限を適切に行い、最小限にする義務がある。
 その中で看護師は患者を24時間観察し、看護にあたっている。
 精神疾患という複雑な病態をもつ患者を看護する中で、看護師は隔離拘束において判断を求められる状況が多々ある。
 当院の精神科救急入院料病棟では、隔離観察中の患者に対し、医師と看護者のカンファレンスにより開放観察が実施され、それは明確な基準はなく個々の経験に委ねられることが多かった。患者は複雑な病態を持っているため、医師とのカンファレンスに参加する看護者個々の能力の違いによって開放観察時間の判断基準に相違が生じ、開放観察の目的・目標が不明確になってしまっている例もある。つねにいま行われている行動制限が最小限かどうか、それぞれの患者に対して病棟で統一した医療・看護を提供できているか疑問であった。
 そこで、当院精神科救急入院料病棟における開放観察の実態を調査したうえで、開放観察時間の判断が行なえる評価シートを作成・活用することで開放観察における看護の標準化をめざし、行動制限最小化につながるかを検討し、一定の評価と今後の方向性が示唆されたので報告する。

用語の定義

完全隔離期間
隔離観察開始から開放観察開始、もしくは隔離解除までの開放観察をせず、完全に24時間隔離観察をしている期間。(図1)
開放観察
行動制限開始時に比べて症状は改善されてきたが、行動制限を解除するほどの安定には至っていないと判断される患者に対して、精神保健指定医の治療計画に基づき1日のうち一定時間、隔離を中断して症状を観察すること(引用文献1)。
なお、本研究では、看護者同伴での開放観察は研究対象期間には含めない。
全隔離期間
完全隔離期間と開放観察期間を合わせた隔離室に入室している期間。(図1)
再行動制限
隔離室治療を終了し隔離解除となったが、同入院期間中に精神症状が悪化し、再度隔離観察となる状態。
図1 各期間の定義