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第9回「障害者自立支援法」下の地域福祉〜障害者の暮らしを護るために〜

はじめに

 平成18年4月から始まった「障害者自立支援法」下の、障害者福祉活動の現場では、障害者の「応益負担」という、思いもよらなかった国の発想の転換に愕然とさせられました。高齢者福祉を中心として、わずかに上昇しつつあった地域福祉でしたが、次々と法制度の変革に右往左往していたかと思っていた最中の出来事でした。
 障害者の生活はまたしても社会の端っこに追いやられていくのでしょうか?
 私は精神保健福祉領域のソーシャルワー力一として、公務員35年、民間社会復帰施設4年の勤務後、現在の財団法人での活動は6年目になります。大まかにこの間の活動は、精神保健福祉コミュニティ活動、就労支援活動、そして人材育成と地域啓発活動と区分できます。
 このような体験をもとに自立支援法下の障害者福祉を考えますと、基本は一つ、人々の暮らしが有る限り支援活動を続けること、その経過から新たな改革が見いだされるのです。
 従ってこの講座では、地域福祉啓発事業や事例をとおして、苦しみながらもしたたかに生きて行く技を生み出す人々や地域を論じていきましょう。
 二つの地域啓発活動:まず最初に、当法人が継続して開催している『心病む人々にとって住み良い街づくり講座』と、引きこもりの子どもをもつ親の会『虹の会』の事業をご紹介します。

(1)『心病む人々にとって住み良い街づくり講座』

《講座開催のきっかけ》

 この講座を開催したきっかけは、私自身の体験にあります。平成5年頃、筆者は保健所職員として精神保健福祉業務にかかわっていました。その時代には精神障害者地域家族会活動も盛んになり、大阪府下各地に小規模作業所(現在ほとんど小規模授産施設に転換されています)やグループホームが設立されていきました。さらに「街づくり」まですすめるためにはどうしたらいいのかと考え初めていました。
 多くの関係者が、当事者である精神障害者自身が地域社会に発言していくことから始まるのではないかと考えていました。他方地域での精神障害者関係施設の設立には、かなりの反発があった時代ですが、それは今も変わりません。
 地域在住の精神障害者の方々で、作業所などに通い始めて生活が安定して来られた方々が多くなるにつれ、これまで当事者の代弁者として家族が発言してきたことを、これからは当事者本人ができると考えました。
 そして保健所の啓発事業として年間数回開催し、その中に当事者発言の場も持ちましたところ、大変な熱気と反響でした。
 その体験をもとに、現在事務所をおいている大阪府高石市(人口67,000人)で、当事者が発言できる場を作ろうとしたのが5年前です。当時は市内はもとより、大阪府南部である近在からも“語り部"を得ることが難しく、初回は私が平成13年まで勤務していた京都で活動されていた方に、わざわざお越しいただいたりしました。
 これまでの5年、60回近く毎月例会を続ける中で、“語り部"も得ることが出来るようになり、聴衆もまた当事者やご家族、市会議員さんなど多様になっています。変わらないのは、講師と聴衆が毎回「語るも涙、聴くも涙」の場になることです。

《語り始めた精神障害者》

 精神障害をもちながら、自らの体験をバネに、意欲的に社会への啓発をする、たとえ数年あるいは十数年前の事とはいえ、最も苦しかった入院や、先の見えない長い療養の間に失った自信や生活の意欲、体力、友人や仕事のことを語るのは、試練以外のなにものでもないでしょう。それを乗り越え、今多くの当事者が様々な場で語り始めたことは感動に値します。この20年間ぐらいは、精神障害を有していても、地域社会の行政や社会復帰施設で、仲間と適切な生活支援を得ることができ、一人の「生活者」として安定を得た人々が次々と出て来たのです。
 現在大阪府下でも“語り部派遣"を団体の事業にしている所が複数ありますし、最近大阪市内のある団体では、教育現場への当事者派遣事業を提案し、多額の助成金を得ることができ、活発な活動を展開しています。このような動きは、精神障害者の理解を促すために、当事者の体験発表や社会的主張が如何に意義深いかを示しています。
 そのような見方をすると、現在高石市で続けているこの「心病む人々にとって住みよい街づくり講座」に、ひとつ残念な課題が残されています。それは市内在住の“語り部"が未だ得られないことです。精神障害者にとって心おきなく語れる場とは、多くの知り合いができたり、働けたり、グループホームなどの居住場所をもったりするという、地域活動過程が必要なのでしょう。

pdf心病む人々にとって住み良い街づくり講座 (PDFファイル:426KB)

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