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第6回働きたいを受けとめるために〜欠けている生活支援1〜

はじめに

 精神障害をもちながら働くことへの支援が、少しずつ関係者の間に意識されるようになってきました。その背景にはなによりも当事者の生活者としての自覚の向上や、これまで精神障害者の就業に熱意をもって携わって来た人々の実績があるわけですが、2002年より国レベルで行われた「精神障害者自立啓発事業」は、多くの関係者に「就業支援」を意識させることになったと思います。私自身の活動においても、就業支援領域についてはこの数年間に過ぎないのですが、今回は自分自身の認識の変化や具体的な実践をとうして、精神障害者の「働きたい」という希望をどのように支援するのかについて、ソーシャルワークの重要な課題として考えてみたいと思います。

精神障害者の働く意義

 精神保健福祉法第一条には、法の目的として「精神障害者の医療及び保護を行い、その社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行いーー」と謳われています。この文言の中で、従前の精神保健法が改定された平成7年に付け加えられたのが、「自立と社会経済活動への参加」です。すなわち、従来は医療の範疇で、保護的な環境の下での社会復帰を意図することでしたが、これからは普通の労働者として働くことを促進しようというわけですから、画期的なことだと思います。

 精神障害をもつ人々もまた健康な労働者と同じく、"自分で働いて食べていく"という当たり前の喜びが持てるように、働いて賃金を得ることによって、心身の健康の回復や社会的に一人前扱いされるという自信を持てるように、加えて労働によって身につく社会性の向上は、家族や地域の人々に評価されるようになることを目指すのが目的となるのです。 現実には多くの小規模作業所では、何年間も月1万円以下の賃金に甘んじざるを得ない状況の中で、働く意欲を失ってしまうとか、社会的に"労働の欠格条項"ともいえる、法定雇用率に精神障害者がカウントされていないという事実があります。障害者基本法(平成5年)の制定で、心身障害に加えて精神障害をもつものが障害者と認められたにもかかわらず、働ける人として認知されるには程遠い状況なのです。

 また、精神障害者当事者の「働きたい」という希望と、「精神障害者は働けるのか」という雇用側の不安の間にも大きな溝があるのも現実です。精神障害者の生活問題として労働をとらえ、病気を持ちながらも労働意欲を失わない人々に、その人に可能な仕事場と労働条件を整えることができていないからです。