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第5回"姫軍団"の指揮をとったDさん

 

「ネットワーク」は古くて新しいテーマです。老人地域保健施策が急激に動き出した平成の初め頃、国は地域のネットワーク会議に予算を付けました。

 最近では精神障害者の自立支援事業に予算が付くなど、とても有効なことで喜ばなければいけないでしょうが、私自身の中では、「本来的な業務になぜ、わざわざ予算が付くのか。」といった疑問がどうしても消えません。予算が付かなければやらないといった、簡単なものではないからです。

 精神保健福祉も含め、福祉上のニーズをもつ人々の生活支援は、単発で単独でできるものではありません。広範囲に合同してでなければ、そのニーズには応えられないことが殆どだと思うからです。つまり、視点が常に当事者の「生活」に向けられ、そのあり方に対して、どのように支援していくかに焦点を当てていくという姿勢は、多くの福祉従事者の本来的業務であると考えるのです。

 今回はDさんへの支援の過程において、Dさんのための支援ネットワーク"姫軍団"がどのような役割を果たしたかについて考えてみましょう。

事 例 Dさん、女性、45才、単身。
既応歴 糖尿病、ヒステリー、精神発達遅滞。
生活歴 北陸出身、19才で家出、風俗業界で生活、1度結婚したがすぐに別れる。
30才過ぎから、婦人相談所と精神病院を転々と渡り歩く生活となっていた。
性 格 爆発的な行動によって周辺とのトラブルを起こすことが多い反面、人懐こい。行動的。

"姫"との出会い

 Dさんの呼び名は"姫"でした。実に多くの支援者にかしずかれていたからです。

 Dさんが精神病院を退院するとき、熱心な主治医から「糖尿病があるため、保健師による在宅支援をしてほしい。」と保健所に連絡がありました。この主治医は保健所の嘱託医でもあり、Dさんのケアは保健所を基点にした支援で、という読みをもっておられたようです。

 さて、Dさんの精神疾患がいったいどんなものか、当初はよく分からなかったのですが、保健所ではベテランのS保健師と新任のH精神保健福祉相談員が担当することになりました。Dさんは保健所の最寄り駅からひと駅向こうに、福祉事務所と病院の方々の努力で部屋を借りて退院しました。

 早々に訪問したS保健師は、まだ引越しの荷物もほどいていないアパートで、ご飯とどんぶり一杯の梅干で食事をしているDさんと対面する破目になりました。それから数日も経たないうちに、Dさんは共同炊事場で下着を洗い、たちまちアパートの住人と衝突してしまいました。