はじめに

 

「ソーシャルワークってなに?」と問われて、相手がすぐに納得できる答えを出すことは専門家であっても難しいものです。

 一般的には、「カウンセリング」といえば理解される方がかなりいると思われます。一対一の対面がその活動スタイルであることや、「心理的な問題」に対応する、比較的分かりやすい内容だからでしょう。

 「ソーシャルワーカー」は、一対一の対面による支援(相談)は、ごく基本的な技法であって、集団への働きかけや地域活動もするわけですから、平坦にその活動を説明することができません。

 むしろ「生活支援」と最近言われるようになった日本語の方が、分かりやすいくらいです。「生活全体にわたって必要な支援をする」ことによって、相談者(クライエント)が自らの力で歩み始めることを促すのです。「生活支援」の中身には、個別相談、集団療法(グループワーク)、地域福祉活動(コミュニティワーク)等々が含まれています。

 私はかれこれ40年間、精神科ソーシャルワーカーとして、精神科領域で仕事をしてきました。公務員としての35年間は、研究機関、相談機関、そして公衆衛生活動の中核としての保健所に勤務しました。その後は、民間の社会復帰施設の職員を4年間務め、現在に至っています。

 この間、「クライエント」として対応し、かつ私自身が時間と労力、そして意欲をもって共に歩んだ人々は、障害児、思春期障害をめぐる人々や学校の先生、成人精神障害者、痴呆性老人等です。これらの年齢や障害、疾病の異なる人々に共通したもの、それは付き合いや役割を失い、地域社会から孤立する生活のありさまでした。私自身は、次第に「付き合いと役割のある暮らしを取り戻す」ためにソーシャルワーカーがいるのだと確信するようになりました。

 今回「ソーシャルワーク基礎講座」を担当するにあたって、「ソーシャルワークとは」ではなくて、「ソーシャルワーカーとは何をする人か」ということを書きたいと考えています。そうすることによって、ソーシャルワークの多様で、生活を包括的に捉えた活動を知っていただくことができると思うのです。

 「ソーシャルワーカーとは何をする人か」を述べるために、「事例検討」を用いたいと考えています。これらの事例では、すべて私自身がソーシャルワーカーとして対応してきたものであることは言うまでもありません。事例の中には、組織づくりの事例や、社会資源づくりの事例も含まれることになるでしょう。

 私が勤務してきた職場が精神科領域だったために、精神障害者福祉に偏ると思われるでしょうが、むしろどの領域におられる方々にも共通の、そして普遍的なソーシャルワークを体現するソーシャルワーカーの姿を見出していただけたら幸いです。