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自殺対策・新健康フロンティア戦略・臨床研究

国立精神・神経センター精神保健研究所
社会精神保健部 伊藤 弘人

1.はじめに

 「これからの展望」では、精神保健医療福祉の動向についてご紹介してきました。今回リニューアルするにあたり全体を拝見しますと、MMSニュースにおいて、精神保健医療福祉とその政策の動向が、きわめてわかりやすく詳細に紹介されてきたことを理解しました。MMSニュースを見れば、医療機関が必要とする具体的な情報を得ることができるでしょう。
 そこで、「これからの展望」では、MMSニュースとの重複を避け、精神保健医療福祉での大きな政策的方向性に変化や転換があった場合にトピックスとして取り上げることにします。大局的観点から、医療機関の運営と科学技術の進展とに関連する幅広いトピックスについて、紹介することにいたします。
 今回は、自殺対策、新健康フロンティア戦略、および臨床研究についてです。

2.自殺対策

 精神保健医療福祉に関連する領域で、もっとも進展が早い領域のひとつに自殺対策があります。1998年に年間の自殺者数が3万人を超えて以来、高い水準で推移しています。この深刻な状況を改善するために、2002年には厚生労働省の検討会が「自殺予防に向けての提言」を出しました。
 その次に大きな転機を迎えたのは、2005年7月に参議院厚生労働委員会による「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」でした。この決議には、(1)自殺問題に関する総合的な対策を関係府省が一体となって取り組むこと、(2)自殺問題に関する調査研究や情報収集・発信等を行う拠点機能を強化し自殺の実態解明への多角的な検討を行うこと、(3)自殺問題全般にわたる取り組みの戦略を明らかにして予算を確保すること、(4)自殺予防総合対策センターを設置すること、そして(5)自殺した人の遺族や自殺未遂者への支援を推進することが盛り込まれています。
 この決議に対応する形で検討が始まった自殺対策関係省庁会議は、同年12月に報告書を提出しています。並行して11月には総務省が自殺対策を推進すべきという有識者意識調査を発表しています。なお、8月には、WHO西太平洋地域ではじめての自殺予防会議が開催され、WHO西太平洋地域での自殺予防対策の推進の必要性が話しあわれました。
 このような自殺対策の必要性の高まりは、市民の署名活動に後押しされ、2006年6月の「自殺対策基本法」の成立として結実しました。この法律を受け、「自殺総合対策会議」(会長:内閣官房長官)が11月に開催され、同月に開始された「自殺総合対策の在り方検討会」において月1回のペースで議論がなされています。2007年6月までに自殺総合対策政策を示す「自殺総合対策大綱」が閣議決定される予定です。
 なお、厚生労働省においては、昨年12月から「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会」でガイドラインの作成のための検討が開始されています。また、研究レベルでは、厚生労働科学研究費の新たな枠組みとして、自殺対策に関する「戦略研究」が2005年から始まっています。

自殺予防対策の動向
  • 1996年:国連「自殺予防」国家戦略策定・実施のガイドライン
  • 2002年:自殺予防に向けての提言(厚生労働省)
      http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/12/h1218-3.html
  • 2005年
  • 2006年
    • 6月:自殺対策基本法
    • 10月:自殺予防対策総合センター開設
    • 11月:自殺総合対策会議、自殺総合対策の在り検討会(内閣府)
    • 12月:自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会(厚生労働省)
  • 2007年
    • 6月:自殺総合対策大綱(予定)