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地域包括ケアとは何か?

日本の医療保険制度の特徴と課題

 上記の分類において、日本には、「かかりつけ医機能」は公的な制度にはないことがわかる。すなわち、「かかりつけ医」は公的には制度化されておらず(医療が必要な時に受診する医療機関または医師は決まっていない)、「専門医への紹介」も公的には制度化されていない(専門医療が必要なときにかかりつけ医から専門医への紹介システムが公的にはない)。これは、住民の観点からすると、自分が診療を受けたい医療機関に受療することができることを意味する。
 さらに保険制度の特徴を加えて、OECDの整理に基づいてわが国の医療体制の特徴をまとめると、(1)民間主導の医療提供体制で、(2)医療保険が公的制度で整備され、かつ(3)国際的な文脈で定義される「かかりつけ医機能」に関する「公的」な制度がない。OECDの報告書の分類によると、同様な特徴が、オーストリア、チェコ、ギリシャ、韓国およびルクセンブルグなどでの医療体制にもみられる。わが国の医療体制では、国民皆制度と自由開業制の下で、世界的にも稀有な医療へのフリーアクセスが担保されているのである。
 ただし同時に、「公的」なかかりつけ医機能が十分とはいえないという特徴も併せ持つ。フリーアクセスが制度的に担保されているために、予約時に来院しない患者の状況を確認することは求められていない。中には服薬を中断していたために再入院となる場合もあるが、その経緯を知ることができるのは、患者が再び診察に訪れて自主的に報告する場合のみである。患者が複数の医療機関に同時に受療し、同じ治療を受けていたとしても、意識して確認しない限り、患者本人からの申告がなければ、診察している医師は把握できない。
 受療中断や重複治療は、患者アウトカムによくない影響があることは容易に想像できる。フリーアクセスを堅持しつつ、いかに現行制度にかかりつけ医機能を付与するか、これが日本の医療保険制度の最大の課題なのである。

わが国の制度に求められる補強・補完機能と地域包括ケア

 かかりつけ医機能は、一般に、(1)専門医への紹介(トリアージ)機能のみ語られることが多いが、加えて(2)慢性疾患を有する地域住民の治療継続機能を有する。先のOECDの報告書にも、かかりつけ医機能が効果を発揮するためには、(1)紹介先である専門医療の質と費用に関する情報がかかりつけ医側が得られることとともに、(2)かかりつけ医が患者のフォローアップを管理しコーディネートする役割を適切に担うことが必要であると述べている。前者については、費用は診療報酬で一律であり、日本医療機能評価機構などの第三者評価団体が一定の医療の質を明示する枠組みが整備されつつある。問題は後者で、慢性疾患を有する地域住民のフォローアップと、最適な保健医療福祉介護の組み合わせのコーディネートである。なお、後者については、誰を濃厚にフォローアップ・コーディネートするかを明確にする基準が必要である。
 以上から、現在議論がされている「地域包括ケア」について、整理すると次の表となる。医療保険の中に、地域包括診療科・地域包括診療加算が新設された趣旨の重要性が理解できるであろう。実は精神科医療の領域で別の文脈から新設された「精神科重症患者早期集中支援管理料」および「精神科重症患者早期集中支援管理連携加算」も、この地域包括ケアの観点からみると同様の趣旨が盛り込まれていると考えることができる。これらの新設された診療報酬が、その制度趣旨を生かすように活用されていくことに期待したい。

表.「地域包括ケア」の要素と最近の制度