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精神保健医療政策の最近の動向

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
社会精神保健研究部 伊藤弘人

1.精神保健福祉法改正の概要

 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」(以下、精神保健福祉法)案が昨年6月の第183回国会で可決されました。今回の法律改正のポイントは、(1)精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)の策定、(2)保護者制度の廃止、(3)医療保護入院における入院手続の見直し、および(4)精神医療審査会に関する見直しです。精神医療審査会の委員構成の変更等を除いて、その施行は2014年4月1日ですので、霞が関では急ピッチで準備が進められています。

2.精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)の策定

1)精神病床の機能分化

 精神保健福祉法の改正が決まったために、厚生労働省の検討会「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」(座長:樋口輝彦 総長)が平成25年7月26日から開催されています。平成26年度の診療報酬改定に、指針の趣旨が盛り込まれるよう、医療の機能分化部分に関する「中間まとめ」が9月30日に公表されました。その後検討が続き、年末に報告書が公表されています [参考文献1]。入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療の実現を、全ての関係者でめざす内容で、精神病床の機能分化に関するポイントは(1)段階的な機能分化、(2)多職種連携、および(3)限られた医療資源の有効活用と集約できます。精神病床の機能分化については、これまでの複数の検討会の方向性を受け、報告書では次の表の通り整理することができます。

精神病床の機能分化の方向性
2)精神障害者の居宅等における保健医療福祉サービス

 入院医療における機能分化とともに、地域における医療、そして保健や福祉のサービスおよびその連携も指針として検討がなされてきました。地域の居住環境や生活環境を整備するとともに、急性増悪の地域での対応や外来医療の充実が盛り込まれています。
 具体的には、まず多職種チームによる訪問支援である「アウトリーチ」があります。受療を中断している場合や長期入院患者が退院したが病状が不安定な場合などに、医師、看護師、精神保健福祉士等が訪問することが望まれているのです。次に「精神科訪問看護」です。精神保健福祉士等の多職種による連携が推奨されています。外来やデイケアをはじめとする「通院医療」では、特に専門的かつ効果的なデイケア等を行える体制の確保が必要です。これらの施策で今後重要と考えられるのは、「誰に」こういった濃厚な支援が必要かという観点です。重症度や支援必要度という考え方を念頭おく必要があるでしょう。
 精神科救急医療体制については、(1)24時間365日対応できる医療体制の確保、(2)身体疾患を合併する精神疾患患者の受入体制の確保(都道府県による協議会の開催等)、および(3)評価指標の導入です。常時対応型の精神科救急医療機関等は、相互評価を行い、精神科救急医療機関の質の向上を推進する必要があります。なお、一般医療機関との連携の重要性も記載されており、特に、うつ病患者や認知症患者等の早期発見・早期治療に関する、かかりつけ医等の診療技術等の向上に寄与する必要があります。
 保健所や精神保健福祉センターは、訪問支援や相談を通して、精神疾患を持つ患者が早期に適切な医療にアクセスできる体制の整備を推進することが求められています。さまざまな機関との連携体制を整備することが必要です。

3.保護者制度の廃止と医療保護入院手続きの見直し

 保護者制度の見直し、すなわち保護者に関する規定の削除については、関係者の関心の高いところでしょう。これまで、主に家族がなる保護者には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されていました。しかし、家族の高齢化等に伴い、負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定を削除することになりました。
 保護者に関する規定の削除に伴い、医療保護入院手続きについても、変更になりました。まず、医療保護入院における保護者の同意要件を外し、家族等のうちのいずれかの者の同意を要件とすることになりました。ここでいる「家族等」とは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人を指すことになります。該当者がいない場合等は、市町村長が同意の判断を行います。次に、精神科病院の管理者に、医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)を設置することになりました。さらに、地域援助事業者(入院者本人や家族からの相談に応じ必要な情報提供等を行う相談支援事業者等)との連携や退院促進のための体制整備を義務付けることになっています。
 なお、医療保護入院の書式については、厚生労働省の検討会で提示されています [参考文献2]。記載事項として、「推定される医療保護入院による入院期間」や「選任された退院後生活環境相談員」を新たに明記します。また、「退院に向けた取組状況」に関して、①退院後生活環境相談員との相談状況、②地域援助事業者との相談状況、③医療保護入院者退院支援委員会(仮称)での審議状況を記載することになります。なお、記載事項については、今後も、随時改定されていくものと考えられますので、最新の情報を確認ください。