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精神科救急医療体制の現状と展望

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
社会精神保健研究部 伊藤弘人

1.精神科救急医療体制の整備の歩みと検討会

 平成23年9月30日に、厚生労働省の「精神科救急医療体制に関する検討会」から報告書が公表された。この報告書は、今後の精神科救急医療体制の重要な方向性を示しているので、ここでそのポイントをまとめる。
 精神科救急医療体制は、精神科救急医療確保事業と身体合併症救急医療確保事業、そして精神科救急情報センターから構成されている。平成22年からは精神科救急情報センターに24時間精神医療相談窓口が位置づけられている。また診療報酬上は、平成14年に精神科救急入院料病棟が創設されている。
 精神科救急医療体制は、地域住民に責任を持つ地方自治体が整備することが本来である。その観点からは、平成22年の精神保健福祉法の改正で、都道府県が整備すべき内容が盛り込まれたことは、大きな進展ということができる。実は、この項目(19条の11)が施行されるのは平成24年4月である。都道府県や関係者はどのような役割を担うのか、その具体的内容を示すことが、「精神科救急医療体制に関する検討会」の重要なテーマであった。

2.検討会における基本的考え方

 検討会では、精神科救急に関係する現状と課題として、(1) ニーズの増加、(2) 少ない救急に関わる精神保健指定医、(3) 身体疾患を合併する精神疾患患者の課題(患者数の増加と長い受け入れまでの時間)をまとめ、これからの精神科救急医療体制に関して、基本的考え方をまとめている。すなわち、(1) 都道府県が整備する精神科救急医療体制の目標、および (2) 精神科救急医療に関する連絡調整委員会開催である。前者において、精神科救急医療体制を整備する目標として、「重症の救急患者への良質な医療」「精神疾患・障害に起因する重大行為を未然防止」および「在宅患者の地域生活維持の支援」を挙げている。
 この検討会で注目すべきポイントは、救急医療だけではなく、精神障害者が増悪を抑えてできる限り地域で生活できることを目標としていることである。救急医療が単独で存在しているのではなく、地域生活の維持のためにあることを明かに示したもので、地域の中の精神科救急であることを再認識することになった。
 二つ目の精神科救急医療に関する連絡調整委員会については、他の医療機関等の関係機関との連携や具体的事例の共有する場になることが期待されている。特にそれぞれの医療機関で「精神科の救急患者」「精神科救急医療機関」「身体疾患の合併」の定義があいまいであることに課題があり、搬送受け入れの判断基準が明確ではないという問題につながっている。