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今後の精神科医療の動向

国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所
社会精神保健研究部 伊藤弘人

1.はじめに

 平成20年8月1日に寄稿(精神保健医療福祉の今後の展望)した後、精神保健医療政策は大きく変化してきた(表1)。2004年に厚生労働大臣が示した10年間の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」は2009年9月に中間の5年目を迎えた。そこで後期5年間の方向性を示す指針が「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」(座長:樋口輝彦国立精神・神経医療研究センター<現在>総長)の報告書として作成された。この報告書は、今後の施策を検討する上での基礎となるという観点から、今後の精神保健医療福祉の方向を考える上で大きな意味を持つ。
 その後、こころの健康政策構想会議提言書(有識者会議)の報告書が厚生労働大臣に提出され、厚生労働省の「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」が立ち上がり、検討が進められている。検討チームの最初のテーマは地域精神保健医療体制であり、アウトリーチの重要性が示された。本年9月からは、次のテーマである認知症と精神科医療についての検討がなされている。
 また、6月に「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」が閣議決定されたことも、今後の精神保健医療施策の検討に大きな影響力を持つ。なぜなら、(1)いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等の在り方を、平成24 年内を目途に検討すること、(2)「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について平成23年内にその結論を得ること、そして(3)精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について平成24年内を目途にその結論を得ることが示されているからである。
 厚生労働省では、上記検討チームに保護者制度・入院制度に関するワーキングチームを設け、10月から議論を開始している。

表1 精神保健医療政策の動向