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精神科における病棟薬剤業務

医療法人永慈会 永井ひたちの森病院
伊師 頼子

はじめに

 永井ひたちの森病院(以下、当院)は茨城県北部の日立市に位置し、精神科病棟と一般内科病棟、認知症治療病棟を持つ228床の病院である。様々な施設も併設し、広く地域医療を担うとともに、精神障害者の社会復帰を目指している。
 当院では2006年に薬剤管理指導業務を開始し、2007年の病院機能評価認定を機に薬剤師の増員と、薬剤管理指導の届け出を行い、注射薬の個人セット、処方の適正化にも取り組んできた。その後、精神疾患患者の増加や合併症を持った認知症患者の増加、他院からの紹介患者の増加などで、入院時の薬剤管理の重要性が増し、持参薬や投薬歴、服薬状況、病態など患者本人の情報に基づく処方鑑査や調剤の他、様々な場面で薬剤師の職能が求められるようになった。

外来調剤業務について

 薬局は、受付・待合フロアの一角にあり、受診する患者の様子がよく観察できる位置にある。当院では外来調剤業務も院内で行っているので、ほとんどの患者が顔見知りである。
 診察を待っている患者に声をかけ、日常会話から体調や副作用をチェックし、投薬時の様子や服薬状況、薬剤に対する気持ちなど、薬剤師が得られた情報を医師にフィードバックし、処方調整につながることもある。
 外来時から患者に関わり、入院時そして退院後まで継続して薬物療法を支援することは、信頼関係の構築と再発防止に有効である。

薬剤師による病棟ラウンドの経緯

 精神科における薬剤師業務は、抗精神病薬投与による副作用のモニタリングや処方提案、処方の適正化、服薬指導によるアドヒアランス向上と再発予防である。急性期には、悪性症候群や錐体外路症状、イレウスなどの副作用防止のための全身管理、回復期には服薬指導と副作用モニタリング、退院前には再発予防のための服薬教室など、患者の病態にあった関わりが必要である。
 薬剤投与により患者が過鎮静になっていないか、嚥下はどうか、尿閉や便秘になっていないか、錐体外路症状で困っていないか、症状はよくなっているのか、などを薬剤師の目で確認するために、病棟ラウンドを開始した。
 毎日病棟をラウンドして患者を観察し体に触れフィジカルアセスメントする、スタッフに普段の様子を聞いたり医師に病状や処方の意図を尋ねる、服薬指導により患者の服薬に関する気持ちや困っていることを傾聴し、DAI-10(服薬に関する患者自身の気持ち)、DIEPSS(錐体外路症状の評価)、SDS(自己記入式うつ病の評価尺度)などのツールを用いてアセスメントし、処方提案する。その繰り返しにより、副作用の早期発見、処方の適正化、患者のアドヒアランス向上につながっていく。
 また、スタッフに薬剤の効果や副作用について説明することも、薬物療法に対する理解や意識を高め、チーム医療の実現に有効である。

病棟薬剤業務実施加算について

 病棟薬剤業務加算が新設されたことで、頻回の病状確認や、副作用モニタリングなども評価され、診療報酬に裏付けされた業務展開が可能となった。

病棟薬剤業務の算定要件は次のとおりである
◆対象:すべての入院患者(ただし、療養・精神病棟は入院日から8週を限度とする) 
◆業務内容:薬剤師が病棟において、医療従事者の負担軽減・薬物療法の質の向上に資する薬剤関連業務を実施していること
  ・ 医薬品の投薬・注射状況の把握
  ・ 医療安全性情報の把握・周知、相談応需
  ・ 入院時の持参薬管理、服薬計画の提案
  ・ 薬剤投与前の相互作用の確認
  ・ ハイリスク薬の説明
  ・ 薬剤の投与量や流量の計算 等
病棟薬剤業務実施加算の施設基準は次のとおりである
◆薬剤師が病棟において、医療従事者の負担軽減・薬物療法の質の向上に資する薬剤関連業務を実施する十分な時間が確保できることとして
  ・ 病棟ごとに専任の薬剤師を配置していること
  ・ 医薬品情報の把握・伝達のための専用施設を有すること
  ・ 医薬品の使用状況の把握と安全性に関する速やかな措置を講じる体制を有すること
  ・ 病院勤務医の負担軽減、処遇の改善に資する体制を整備すること
  ・ 薬剤管理指導の届け出施設であること
     ※十分な時間として1病棟・1週当たり20時間程度