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精神科チーム医療における精神科専門薬剤師の役割

帝京大学薬学部
斎藤百枝美

はじめに

 日本病院薬剤師会は、昨年度精神科専門薬剤師の過渡的認定を行い6名の精神科専門薬剤師が認定を受けました。そして、本年11月には「精神科薬物療法認定薬剤師」、来年2月には「精神科専門薬剤師」の試験が実施されます。「精神科薬物療法認定薬剤師」の認定のためには、40時間以上の講習会の受講、50症例の薬剤管理指導サマリーの提出、認定試験の合格などの条件をクリアしなければなりません。しかし、その努力は必ず実力となって、精神科医療に携わる薬剤師のレベルアップ、チーム医療における重要な役割を担うことにつながっていくものと考えます。
 今回は、「精神科薬物療法認定薬剤師」、「精神科専門薬剤師」がどのような精神科薬剤業務へ貢献していけるかについて述べたいと思います。

1.処方設計への関与

 精神科では、気分安定剤としてバルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピンなどのTDM対象薬剤を使用することが多くなっています。これらの薬剤は、治療域の幅が狭く増量により中毒域に入ってしまうこともあり、個々の患者さんに最適な用量、投与間隔を設定するためにはTDM解析が欠かせません。福島医大心身医療科においては、エビデンスに基づく治療の一環として薬剤師によるTDM解析を実施していました。TDM解析の結果に基づき主治医と相談し、患者さんの最適な処方設計へ薬剤師が直接関与できることは精神科薬剤業務として大変重要です。また、服薬指導において血中濃度の推移をグラフで示しながら説明することは、患者さんの理解を助けるための有用な方法であると考えます。

2.アドヒアランスの向上

 先日、福島県のパネルの会という統合失調症の患者さんと家族の会で「コンプライアンスからアドヒアランスへと考え方が変わっています」というお話しをしました。その際事前に、パネルの会実行委員会が統合失調症の患者さんと家族へアンケートをしたのですが、「コンプライアンスという言葉を知っている」と答えた方は151名中14名(9%)、「アドヒアランスという言葉を知っている」と答えた方は151名中6名(4%)でした。また、アンケートの中に「コンプライアンス、アドヒアランス、意味がわからない。日本語で書いて」というご意見がありました。この結果をみて、我々医療従事者が当然のことのように使っているコンプライアンス、アドヒアランスという言葉が、実は患者さんや家族にとって、ほとんどわからない言葉であったということです。どんなすばらしい意味をもった言葉でも、わからないのでは意味がありませんし、患者さんには伝わらないと強く思いました。コンプライアンスは「服薬遵守」という日本語訳がありますが、アドヒアランスには適当な日本語訳はありませんでした。そこで、パネルの会の開催前に福島医大の丹羽教授、和田先生と相談しアドヒアランスの日本語訳を考えました。これは丹羽教授の提案ですが、アドヒアランス=「服薬治療への主体的参加」です。当日は、アドヒアランス=「服薬治療への主体的参加」と説明し、患者さんや家族の理解を得ることができたと思います。このように「いかに患者さんや家族にわかる説明をすることができるか」そして「どうすると患者さんのアドヒアランスを向上することができるか」ということは服薬指導においても重要であり、臨床で得られた知識・技術には一つ一つに意味があることを同僚たちに伝え、それを結集してエビデンスを作っていきたいと考えています。

0(08.11.14)