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精神科専門薬剤師を目指そう(No.7-1)

桜ヶ丘記念病院
吉尾 隆

Ⅳ.精神科専門薬剤師に必要な知識

 第1回で述べていますが、精神科専門薬剤師の定義には、8つの条件が挙げられています。これらの条件を満たすためにはどのような知識やスキルが必要となるのか解説します。

1.精神疾患の病態と患者特性を十分理解していること

 精神科専門薬剤師が対象とする精神疾患は、ICD-10により分類されたMental and Behavioural Disorders(精神および行動の障害)とし、これらの疾患に対して行われる薬物治療が対象となります。今回からは、代表的な精神疾患である統合失調症、気分障害、神経症・心身症について、専門薬剤師として理解しておくべき病態と患者特性について解説します。

The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders
  F0 症状性を含む器質性精神障害
  F1 精神作用物質使用による精神および行動の障害
  F2 統合失調症(精神分裂病)、統合失調症型障害および妄想性障害
  F3 気分(感情)障害
  F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
  F5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
  F6 成人の人格および行動の障害
  F7 精神遅滞
  F8 心理的発達の障害
  F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害(F90-F98)および
        特定不能の精神障害(F99)
1)統合失調症とは

 統合失調症は脳の病気です。脳内の一部の神経系の機能が障害され、その結果様々な精神症状を呈する疾患です。幻覚、妄想、まとまりのない思考・会話などの陽性症状や、意欲低下、感情鈍麻などの陰性症状を特徴とし、社会生活に影響を及ぼす精神障害です。罹患後早期には、一般に幻覚や妄想等の陽性症状が優勢であり、罹病期間後期には、感情鈍麻、引きこもり等の陰性症状、うつ症状等の気分障害及び認知機能障害がより目立つようになります。発症率は、約1% (0.5%〜1.5%)といわれています。性別、人種による違いはありません。病気の原因は未だ解明されていません。ドパミンなどの脳内神経伝達物質のバランスが崩れて発症するといわれています。生物学的脆弱性をもつ人がストレスを受ける際に発症するという、「ストレス‐脆弱性モデル」が発症の概念として考えられています。
 統合失調症では疾患の進行にいくつかの段階があると考えられています。病状の前触れが現れる“前兆期”、急激な症状(主に陽性症状)が現れる“急性期”、急性期に消耗したエネルギーを補充するために引きこもりなどの症状(主に陰性症状)が現れる“回復期”などに分けることができます。薬物療法は早期に行うことが重要であり、予後を良好にするといわれています。しかし、実際に治療が行われるのは、症状が激しく見える急性期から回復期にかけてということになります。図1にLiebermanによる統合失調症の生涯経過理論的モデルを、また、全家連誌による図2に統合失調症の経過と症状を示します。

  図1.統合失調症の生涯経過理論的モデル

統合失調症の生涯経過理論的モデル

  図2.統合失調症の経過と症状

統合失調症の生涯経過理論的モデル