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服薬指導7 家族に対する服薬指導2

桜ヶ丘記念病院
吉尾 隆

(3)心理教育に用いられるプログラム (図4〜5

 心理教育は、患者自身が自分の受けている薬物療法について正しい知識と情報を持ち、病気に立ち向かうために大変重要である。具体的なプログラムとしてJ.F.ワイルダーにより開発されたABCプログラムがある。このプログラムは患者自身が病気に対処する能力や対人関係能力を改善し、自己評価を高めることができるように、認知行動療法に基づく12種類のABCシリーズ「The ABC's of Skills Training Series」と呼ばれている。このプログラムの中の、精神科でよく見られる病気について、その病名の由来や原因と症状、再発の警告サインや治療について学ぶ「こころ(=脳)の病を知るためのABC("The ABC's of Understanding Mental Illness")」と、薬物療法を上手にうけるために主治医と情報を共有する方法や薬物療法の基本的な注意事項や副作用への対処法を学ぶ「薬物治療の ABC("The ABC's of Handling Your Medication")」がサイコエデュケーションの中心となる。

 一方で、統合失調症に対するケアは、現在、当事者のみならず家族に対しても、発病・再発を患者のもつ精神生物学的脆弱性とストレスフルな環境要因との関連と考える脆弱性−ストレスモデルに基づいた心理教育的アプローチが行われ効果を上げている。心理教育的アプローチは、治療者の立場や具体的なプログラムないし内容の違いによってPsychoeducation and Management、Behavioral Family Therapy、Family Intervention、System Consultation、家族教育など様々な呼び方がされている。これらはどれも基本的には分裂病は生物学的疾患であり、家族関係が病因とは考えられていないこと、しかし、家族の患者への対応の仕方は再発の可能性と関連していること、患者に対して不適切な対応をする家族のもとで生活する患者は再発しやすいことなどを説明し、再発の予防を目的に、不適切な対応に関連する要因と思われる統合失調症についての知識、対応の仕方について心理教育を行うためのプログラムである。まず、統合失調症についての知識を伝え、その知識に基づいた薬物療法を含む適切な対応を身につけてもらうことが重要である。そして、教育的な介入によって家族の不適切な対応、とりわけ患者の脆弱生に対してストレスフルとなる可能性のある対応を改める援助を行う。薬剤師が行う薬物療法に関する情報提供も、家族が患者の服用している薬剤に関する情報を正確に理解できるような工夫が必要である。

 統合失調症では、患者と家族との関係は再発と密接な関係があると言われており、服薬の継続に関しても、患者と家族が情報を共有していることが重要であることを協調する。この中で我々薬剤師も、患者が、複雑な情報(内容、話し方)の理解が困難であること、注意・集中の持続が難しいこと、考えをまとめて伝えること、言葉による表現に障害があること、人とコミュニケートすることが苦手であること、自尊心が傷つきやすいこと、自分に関連づけたり、被害的にうけとりやすいといった脆弱性について家族にも説明しておく必要があり、抗精神病薬の働きについてもこのような点について注意しながら説明を行う。特に、抗精神病薬による鎮静作用や抗幻覚・妄想作用は、集中力や理解力を低下させてしまう場合があり、病状とは別にこのような症状が現れる可能性を説明する必要がある。正確な情報がないために家族が抗精神病薬の副作用を病状の悪化と勘違いしてしまい、無理な受診や入院を勧めることになると患者・家族間に無用なストレスを生み出すことになる。したがって、家族が薬物療法に関する効果や問題点、必要性を理解していることは心理教育の重要なポイントとなる。