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業務連携4

東邦大学薬学部医療薬学教育センター
臨床薬学研究室 吉尾 隆

「精神科病院薬剤師と保険薬局薬剤師連携の重要性」

Ⅰ.はじめに

 精神科医療においてチーム医療の重要性が指摘されてから久しい。しかし、精神科チーム医療は、精神科病院をはじめとした医療施設内では多職種の連携が上手く取れているが、地域との連携に関しては未だ不十分な点も多いのが現状でもあり、特に地域の薬剤師との連携は殆ど取れていないのが現状である。現在、精神科医療は入院治療から地域社会でのサポートを行い、外来での治療を行うことへと方向が転換されている。精神科病院における薬剤師の業務も施設内での連携から地域における保険薬局や社会資源のスタッフとの連携へとその範囲が広がっている。
 今回は特に薬剤師の連携について、精神科病院薬剤師と保険薬局薬剤師連携の重要性について述べさせていただく。

Ⅱ.精神科チーム医療における薬剤師の役割

 精神科チーム医療における薬剤師の役割に関しては、Jones DがClinical Pharmacists Working with Mental Health Teams-A Patient-orientated Model for Healthcare Professionalsにより2004年に英国での薬剤師の役割を紹介している。この中でJones Dは、臨床サービスとアドバイス(調剤・説明)、コミュニティー・チームの一員としての活動、薬剤師による薬物療法レビュー、薬物療法教育グループ、患者や家族のためのアドバイス、情報、教育、他の専門家のためのアドバイス、情報提供、薬歴の作成とガイドラインの提示、セカンドオピニオンとしての役割/副作用チェック等を挙げている。

1.英国における精神科専門薬剤師の役割

 英国においては、地域の精神科専門薬剤師が、医薬品使用に関するアドバイスと医薬品の供給を行うこと、医療チームに対する臨床的な情報の提供を行うこと、入院中の患者には特に急性期には1日1回訪問し、薬物治療のモニターを行い、薬歴をまとめること、週に一回のミィーティングでは、治療薬の決定に直接係わり、看護師、作業療法士等に相互作用や副作用の情報を提供すること、看護師やジュニアドクター等の病棟におけるトレーニングでは、新規抗精神病薬やsedationに関するガイダンスを行っている。また、利用者が十分な薬剤情報を入手しているか等について常に調査している。さらにEU圏内では薬剤に関する使用上の注意を開示する必要があり、文書のみではなく口頭でも情報を伝えているが、精神科専門薬剤師はPharmacy Advisory Committeeにおいて精神科における薬物治療の解説書を作成し医療チーム内において共有すること等が行われている。

2.我が国における精神科薬剤師の役割

 我が国においては、これらの英国の事例を参考にして著者らが精神科チーム医療における薬剤師の役割として、新たな副作用(肥満、体重増加、血糖値上昇等)への対応、多剤併用大量処方の改善、社会復帰への対応、リハビリテーションの障害となる過鎮静や認知機能障害への対応、社会復帰プログラムの効率化、医師や医療スタッフのみならず、地域や患者・家族との連携による薬物療法の管理を行うこと等を提案している。また、精神科薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師の役割として薬物治療の維持(効果・副作用・相互作用などのモニターによる)、処方支援(適切な薬物治療を行うための支援)、処方設計(適切な薬物治療の提案)などを挙げている。このように、精神科薬物療法の適正化を図ることは、薬剤師による精神科領域での専門性であり、チームの中での役割であると考えている。

3.国内における地域精神科医療

 国内においても地域における社会資源の整備が進みつつあり,保健所を始め援護寮,授産施設,作業所,グループホーム,訪問看護・介護,福祉工場など様々な社会資源を当事者は利用することができる。これらの資源を上手く利用することで,社会の中で精神障害者を支援し,自立を可能にすると考えられる。

4.地域精神科医療における薬剤師の役割

 地域においてもやはり薬物療法の重要性は高く認識されているが、現状は、精神科領域における訪問薬剤管理指導が診療報酬上は認められておらず、病院薬剤師も保険薬局薬剤師も,ある特殊な条件下においてボランティアとして地域精神科医療に参加しているのみである。