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「働き方改革関連法」成立で“待ったなし”の長時間労働の是正 


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

2018年2月に発表された6つの緊急的な取組

図表1 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要

出典:厚生労働省「第8回医師の働き方改革に関する検討会」(平成30年7月9日)参考資料1を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000331110.pdf

 2018年6月19日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)、所謂、「働き方改革関連法」が可決成立した。その前提として、厚生労働省でこれまで議論されてきた「働き方改革」の流れを振り返ってみたい。

 医療の時間外労働に関して、政府が2017年3月に公表した「働き方改革実行計画」の中では、「時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要」なことや、「医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後をめどに規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る」との方針が打ち出された。

 それを受ける形で、厚生労働省は「医師の働き方に関する検討会」を2017年8月に設置し、検討を進めてきた。同検討会では2018年2月に「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を、まとめることになった。

図表2 医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組の概要

出典:厚生労働省「第8回医師の働き方改革に関する検討会」(平成30年7月9日)資料1を基に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000331103.pdf

 緊急的な取組に関しては、①医師の労働時間管理の適正化に向けた取組、②36協定等の自己点検、③既存の産業保健の仕組みの活用、④タスクシフティング(業務の移管)の推進、⑤女性医師等の支援、に加え⑥医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取組――の6つの提言が示されていた。それらの提言を下に要約する。

 「医師の在院時間についての客観的な把握。ICカード、タイムカード等が導入されていない場合でも、出退勤時間の記録を上司が確認する等、在院時間を的確に把握すること」と明記。「36協定に定める時間数を超えて時間外労働をさせていないかの確認」「36協定で定める時間外労働時間数について自己点検を行って、業務の必要性を踏まえて長時間労働とならないように、必要に応じて見直しを行う」こと。「自己点検に当たっては、診療科毎の実態の違いを考慮した複数の定めとする対応」も検討。併せて、「就業規則等の労働関係法令上、作成が求められる書類についても各医療機関で内容を確認し、自己点検後の36協定等を適用対象である医師に対してもきちんと周知する」と踏み込んだ内容となっていた。

 「労働安全衛生法に定める衛生委員会や産業医等、既存の産業保健の仕組みの活用を図るべく長時間勤務となっている医師、診療科等毎に対応方策等について個別に議論する」は各医療機関において、医師の業務負担軽減のため、多職種へのタスク・シフティング(業務の移管)を推進する。具体的には*初診時の予診*検査手順の説明や入院の説明*薬の説明や服薬の指導*静脈採血*静脈注射*静脈ラインの確保*尿道カテーテルの留置(患者の性別を問わない)*診断書等の代行入力*患者の移動――等になる。

 これら内容は、看護師、薬剤師、検査技師等にシフトすべき業務の内容へ、かなり具体的に踏みこんでいるが、「医療安全に留意しつつ、原則、医師以外の職種により分担して実施することで、医師の負担を軽減。各医療機関において労働時間が長い医師について、その業務の内容を再検討し、前述③の仕組みも活用しつつ、関係職種で可能な限り業務分担が図れるように検討を行う」としている。

 「女性医師等の支援」として、出産・育児、介護等のライフイベントで臨床に従事することや、キャリア形成の継続性が阻害されないように、「各医療機関で短時間勤務等、多様で柔軟な働き方を推進する等のきめ細やかな対策を進める」としている。

 ⑥「前出①〜⑤以外の取組」として、〇勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等の対応を行なわないこと、〇当直明けの勤務負担の緩和(連続勤務時間数を考慮した退勤時刻の設定)、〇勤務間インターバルや完全休日の設定、〇複数主治医制の導入――が織り込まれている。