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「公認心理師」国家資格化がもたらすもの〜医療現場・医療経営に与える影響とは? 


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

厚労省・文科省両省が所轄する 心理技術職の国家資格が誕生

 1月24日の中医協総会で、2018年度診療報酬改定・個別改定項目の概要(短冊)が明らかになった。2月7日に厚生労働大臣への答申が行なわれ各改定項目の実際の点数や詳細な要件設定等が公表された。

 その中で新資格「公認心理師」に係る言及があることに注目したい。精神科系医療機関以外には余り馴染みのない職種かもしれないが、従来、医療機関等で勤務する臨床心理技術者の資格である臨床心理士は国家資格ではなく、文部科学省の管轄する団体が認定する民間資格。国家資格である精神保健福祉士とは区別され、随分、前から医療機関で働く臨床心理士からも国家資格化が議論されてきた。2005年頃に国会で「医療心理師」の国家資格化が検討されたこともあったが、関係団体や学会等への根回し不足で頓挫している。

 ちなみに従来、診療報酬の規定にある臨床心理技術者とは、臨床心理士だけを指す訳ではなく、一定の教育を受けた心理職全般を対象にしている。2005年の医療観察法の施行に伴い、厚生労働省の省令で「心理学に関する専門的知識及び技術により心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行う能力を有すると認められる者」として臨床心理技術者が定義された。

図表1 公認心理師法(概要)

出典:公認心理師カリキュラム等検討会報告書(厚生労働省)平成29年5月31日
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000167171.pdf

 こうした声を受けて、厚生労働省、文部科学省は以前から国家資格化を検討し、「公認心理師法」を2015年9月16日に公布。翌2016年3月15日に指定試験機関に係る規定が施行され、2017年9月15日より全面施行となった。同時に「公認心理師法施行令」、「公認心理師法施行規則」(平成29年文部科学省・厚生労働省令第3号)が制定。同日から施行された。

 文部科学省・厚生労働省による同法の趣旨を要約すると「心の健康の問題は国民の生活に関わる重要な問題で、学校・医療機関・その他の企業等、様々な職場における心理職の活用の促進が喫緊の課題。ただ、わが国においては心理職の国家資格がないことから、国民が安心して心理に関する支援を受けられるようにするため、国家資格に裏付けられた一定の資質を備えた心理職が必要とされてきた。法はこのような現状を踏まえ、公認心理師の国家資格を定めて業務の適正化を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする」との内容だ。そして、2018年9月9日に第一回「公認心理師」国家試験が実施されるが、心理専門職として仕事に従事する人たちの中で、「5年間の心理職の実務経験があり、指定科目を一部履修出来なかったために受験資格が得られない現任者」及び「実務経験5年以上の現任者」を対象にした経過措置が設けられている。後者の現任者とは、両省が指定する現任者講習会を受け修了することで、特例措置として受験資格を与えるというものだ。

 本来、臨床心理士の資格を取得する人たちは、一般的に4年制大学において省令で定める科目を履修した上で、更に大学院へと進み必須科目を履修。その後、文科省管轄の(公社)日本臨床心理士資格認定協会の認定試験を受けて合格しなければ、資格が得られない。  

 新しい「公認心理師」資格取得の流れだが、以下のAからGまで7パターンあり従来の臨床心理士に比べて同資格を得るまでの道筋が多様で、一見しただけでは分り難い。(前出・特例措置に係るのはGだが、これに関して医療現場の多くの臨床心理技術者から疑義が生じ始めているので後述する。)

図表2 公認心理師の資格取得方法について

出典:中央社会保険医療協議会総会(厚生労働省)平成29年12月13日
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000167171.pdf

 ただ、管轄する両省が初年度はハードルを下げて従来の臨床心理士以外にも裾野を拡げ、「公認心理師」資格取得者を数多く養成したいと考えているのは、容易に想像がつく。趣旨にある大義名分は「様々な職場における心理職の活用促進」とされるが、公認心理士を拙速に増やしたい理由として、両省の官僚には、別の思惑もあるような気がしてならない。筆者は「公認心理師」資格化に伴い主に医療現場で仕事をする臨床心理士、精神保健福祉士、精神科医、心理学者、病院事務長等を取材し、国家資格化に伴う医療現場での反応や、今後の医療経営に与える影響等を探ってみた。取材対象が主に現任の医療従事者であり匿名取材を余儀なくされたが、ここからはルポの形で紹介していきたい。