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医療施設の「外来」戦略〜徐々に進む診療科名表示の緩和・拡充の影響と多様化する専門外来の動向 


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

メンタル・クリニック開業の急増と都心部での競争激化

 2016年診療報酬改定で療養担当規則が改正され、2017年の4月より「紹介状なしで大病院を受診した場合」に、初診5000円、再診2500円の定額の別途負担が課せられるようになった。要するに外来診療に関して、「一般の外来は診療所か(200床未満の)中小病院が担い、特定機能病院や地域医療支援病院等の大病院は専門・特殊外来や紹介外来を担う」機能分化の方向性が、より鮮明に打ち出されたわけだ。その背景としては「かかりつけ医」(主治医)政策を推し進めたい厚生労働省の狙いが明白だ。

(図表1):診療科目別に見た主な一般診療所数の推移(過去の医療施設調査を基に作成・重複計上)  *(注)歯科を除く
  1996年 2005年 2008年 2011年 2014年
総数 87,909 97,442 99,083 99,547 100,461
内科 58,110 63,286 63,083 61,207 63,888
呼吸器内科 7,779 7,336 7,894
循環器内科 12,963 12,034 13,097
消化器内科
(胃腸内科)
19,108 17,353 18,658
腎臓内科 873 1,169 1,720
外科 16,365 16,641 16,289 13,644 13,976
小児科 27,095 25,318 22,503 19,994 20,872
産婦人科 4,225 3,622 3,555 3,284 3,105
産科 929 779 400 335 364
婦人科 2,740 2,600 2,129 1,892 1,907
精神科 3,198 5,144 5,629 5,739 6,481
神経内科 1,727 2,422 3,385 2,901 3,065
心療内科 662 3,092 3,775 3,864 4,577
小児外科 275 249 333 357 383
アレルギー科 880 5,356 6,300 6,122 7,241
リウマチ科 1,089 3,761 4,044 3,893 4,403
整形外科 11,119 13,205 12,929 12,252 12,792
リハビリテーション科 9,602 13,489 12,566 11,252 12,198
脳神経外科 864 1,450 1,562 1,620 1,736
糖尿病内科
(代謝内科)
1,908 2,440 3,273
乳腺外科  364 500 664
眼科 7,940  8,760  8,403 8,239 8,260
耳鼻いんこう科 5,593 5,942 5,883 5,738 5,870
皮膚科 11,325 12,844 12,436 11,518 12,328

 外来診療に対して本格的に「フリーアクセス制限が始まった」とも言えるが、大病院だけでなく中小病院、診療所等も含めて、「外来診療」機能の再検討が求められる時代を迎えている。診療所から見ていくと(図表1)、無床・有床含め一般診療所の数は2005年度(9万7,442)→2011年度(9万9,547)→2014年度(10万461)と、1990年代から2005年までをピークとする開業ラッシュの時代の勢いはない。横ばいか、やや微増傾向で推移している。診療科目別に見ると2014年度は内科を標榜する診療所が6万3,888と最も多く、診療所総数の63.6%を占めていたが、2005年度(6万3,286)と比較すると大きな変化はない。国が後押しする「かかりつけ医」政策の中心を担うとされる内科診療所は、過去10年間で、殆ど増えていないのが実態だ。一方、外科を標榜する診療所は2005年の1万6,641から2014年は1万3,976と減少しているのが目立つ。

 この他の診療科目の同年度比較で顕著に増えているのが、神経内科(2,422→3,065)、心療内科(3,092→4,577)、精神科(5,144→6,481)、アレルギー科(5,356→7,241)、リウマチ科(3,761→4,403)等で、その中でも特に精神・神経科系診療所の新規開業が著しく増加していることが伺える。その背景には、2004年に始まった『精神保健医療福祉の改革ビジョン』に沿った形で、診療報酬等の医療政策面で年々、「退院促進」の流れが強まってきたこと。ストレスやうつ病等、メンタル・ヘルスへの関心高まりや、「認知症の人」の激増。更にレスパイト・ケアのニーズ急増で、特に東日本大震災の発生や原発事故、各地における大型台風の勃発等を原因に被災者及び家族への心のケアが、より強く求められた社会的背景も無視できない。1996年と比較すると、2014年度は精神科を標榜する診療所はほぼ倍増、心療内科は7倍近くにも伸長し、これらの領域におけるマーケットが近年、急拡大してきた。一方で、大都市圏では新規開業したメンタル・クリニックの過当競争が顕在化し、「軽装備・一人医師体制」のメンタル・クリニックの中には、特色を打ち出せず集患に苦労するケースも散見されるようになった。

 少子高齢化へと向かう時代を反映し、2005年→2014年の9年間で、小児科(2万5318→2万872)、産婦人科(3622→3105)の減少が目立つが、小児先進医療の発達に伴い小児外科を標榜する診療所が(249→383)と伸長していることは注目に値する。