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≪地域医療連携推進法人≫の全容と、地域医療機関の統合・集約化の可能性を探る

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

第7次医療法改正で地域医療連携推進法人が創設(施行は2017年4月2日)

 2015年9月28日、第7次医療法改正が公布され、「地域医療連携推進法人」(以下、連携推進法人に略)が創設された。連携推進法人に関しては、2013年頃に新型法人(仮称、非営利ホールディングカンパニー型法人制度)としての議論がスタートし、「日本再興戦略」(改訂2014年)で同年の6月24日に閣議決定が行われた。

「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)

第二3つのアクションプラン
二.戦略市場創造プラン
テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸
(3)新たに講ずべき具体的施策

i )効率的で質の高いサービス提供体制の確立

① 医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設
地域内の医療・介護サービス提供者の機能分化や連携の推進等に向けた制度改革を進め、医療、介護サービスの効率化・高度化を図り、地域包括ケアを実現する。

 このため、医療法人制度においてその社員に法人がなることができることを明確化した上で、複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」を創設する。

 その制度設計に当たっては、産業競争力会議医療・介護等分科会中間整理(平成25年12月26日)の趣旨に照らし、当該非営利ホールディングカンパニー型法人(仮称)への多様な非営利法人の参画(自治体、独立行政法人、国立大学法人等を含む)、意思決定方式に係る高い自由度の確保、グループ全体での円滑な資金調達や余裕資金の効率的活用、当該グループと地域包括ケアを担う医療介護事業等を行う営利法人との緊密な連携等を可能とするため、医療法人等の現行規制の緩和を含む措置について検討を進め、年内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年中に講ずることを目指す。

 さらに、大学附属病院が担っている教育、研究、臨床機能を維持向上するための措置を講ずることを前提に、非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)を活用した他の病院との一体的経営実現のために大学附属病院を大学から別法人化できるよう、大学附属病院の教育・研究・臨床機能を確保するための措置の具体的内容、別法人化に向けた必要な制度設計について、非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の検討内容等を踏まえつつ検討を進め、年度内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年度中に講ずることを目指す。
あわせて、自治体や独立行政法人等が設置する公的病院が非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)に参画することができるよう、必要な制度措置等について検討する。

出典:第7回医療法人の事業展開等に関する検討会 資料1(平成26年10月10日)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000061103.pdf

 そこでは「地域内の医療・介護サービス提供者の機能分化や、連携の推進等に向けた制度改革を進め、医療・介護サービスの効率化・高度化を図り、地域包括ケアを推進する」との目的が示されてる。具体的に「複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする『非営利ホールディングカンパニー型法人制度(新型法人)』を創設する」と明記。各地域で医療・介護サービスのシームレスなネットワークを進めるために、当事者間の「競争」よりも「協調」が必要との観点から、医療法人等が容易に再編・統合等をし易くする制度が必要とされた。「日本再興戦略2014」ではこの他、「保険外併用療養費制度の大幅拡大」等も織りこまれている。同戦略は内閣府に設置された「日本経済再生本部」が主導したもの。メンバーの多くは与党政治家を中心に構成されており、多様で複雑極まる日本の医療法人制度に明るい人は殆どいない。

 同本部は当初、アメリカで70医療機関のアライアンスを実現しているメイヨ―クリニック(ミネソタ州)のような大規模医療法人を想定していたことが分かる。しかし、医療機関の「営利追求型(PROFIT)」、「非営利(NONPROFIT)」の基準が明確な米国と、医療法で「非営利」を原則としながらも曖昧な日本の医療制度との違い。更に医療法人のグローバルな成長・発展を重視していた内閣府と、「良質な地域医療の実現」を優先する医療業界の考え方には齟齬を来す部分も多く、中身の検討・調整は難航し、紆余曲折があった。14年の閣議決定以降、この新型法人の議論は厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」(以下、同検討会)へと引き継がれ、日本の医療業界の実状に沿った現実的な検討が進められた。そして、2015年2月に同検討会はようやく、連携推進法人の仕組みを盛り込んだ報告書を発表した。

 そこで注目したいのは、「非営利新型法人(連携推進法人)については、“地域医療構想との整合性を図る”との考え方が新たに織り込まれた点。従来の「地域包括ケアの推進」から更に踏み込み、「地域医療構想を達成するための一つの選択肢」として位置づけられた。同報告書では連携推進法人について、「複数の医療法人等に関する統一的な連携推進方針(仮称)を決定し、横の連携を強化することで、競争よりも協調を進めると共に、グループの一体的運営により、ヒト・モノ・カネ・情報を有効に活用することで、地域において良質かつ適切な医療が効率的に提供される体制を確保する」と規定された。要するに連携推進法人を活用したグループ化を実現するためには、参加する複数法人で共通の理念に基づいたフラグシップ(旗印)が必要とされたわけだ。

 連携推進法人には内部機関として有識者による「地域医療連携推進協議会」からの意見具申や連携推進方針の評価を受け、公表すると同時に外部監査が義務付けられる。同方針は非常に重要で、公認会計士の松田紘一郎氏は「JAHMC」2016年9月号(〔公社〕日本医業経営コンサルタント協会)で「医療機関を社会的に有益な継続事業体としてステークホルダーに約束し、公表・宣言する“社会的責任の遵守宣言”」と指摘しているが至言だと思う。