Home > 経営管理講座 >医療機関が主導する≪地域包括ケア・システム≫実践事例 (PAGE 1)

医療機関が主導する≪地域包括ケア・システム≫実践事例

医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

2014年は「地域包括ケア」元年 環境整備に向け動き出した民間病院

 2000年の公的介護保険制度の施行により、かつては家族介護に依存してきた在宅の要介護高齢者のケアは社会化されるようになった。しかし、団塊の世代が全て75歳以上を迎える2025年の日本社会における人口構成を考えると、介護保険サービスだけでは支えきれない時代を迎える。介護に加えて、医療と予防、生活支援に住まいという5つの要素が備わって初めて、私たちの安定した生活が成り立つことになる。
 そうした考え方を基本に2014年6月に国会を通過した「医療介護総合確保推進法」の第一条には、「地域包括ケア・システムを構築する」と書かれ、第二条にその定義も明記された。それをターニング・ポイントとして位置づけると、多くの専門家が指摘するように、2014年を「地域包括ケア」元年と呼ぶことが出来るだろう。この年を契機に、全国各地の市町村・自治体や、医師会等で地域ケア会議や「多職種連携の会」等の開催が活発化した。画期的だったのは、厚生労働省や日本医師会、地域医師会、或いは先駆的な自治体等で、「地域包括ケア推進室」が設置され始めたこと。これまで、地域包括ケアは一部の強力なリーダーの努力の下に進められてきた事例が多かったのだが、行政や医師会、連携する企業等を中心にフォーマルな組織として動き始めた。
 「地域包括ケア・システム」(以下、同システム)の原型は40年以上前に遡る当時の山口昇院長をキーパーソンとした「公立みつぎ病院」(広島県三次市)の取り組みとされている。介護保険制度も含め、制度の仕組みは全て「官」が主導したわけではなく、同病院のように各々の地域で先駆者の取り組んできた地道な努力が評価され、具体的な政策や仕組みとして結実した経緯がある。2012年の介護保険制度改正で創設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、同システムを推進する仕組みと考えられるが、これも現場での取り組みが先行し、後に制度として採用されたもの。「地域包括ケア」元年からの3年間、全国各地で医療機関主導による同システム実現に向けた「実験」や「実践」が、数多く試みられてきた。
 ここ2年程の間に医療現場、研究発表等を取材したコンテンツを基に、「民間」医療機関の主導する同システム実現に向けた取り組みを3ケース紹介したい。ただ、同システムは医療・福祉施設だけでなく官・民、更に地域住民等、様々な社会資源が組み合わさって初めて成立するもの。本来、医療施設側の視点だけでなく、その周辺や、地域住民の声まで吸い上げなければ、その実相は見え難く評価は難しい。また、ここで紹介するのは、同システムの「完成形」とは言えず、現在「進行形」のケースが多くを占める。取材時よりも大きな進化を遂げている実践事例もあり、誤解を招かないよう各施設の所在地や名前等は匿名にし、実際の数値等に若干の改変を加えさせて頂いたことを付け加えておきたい。