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「認知症医療経営」の新潮流
〜医療機関の新たなマーケット創出に向けて


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

2050年には人口の1割以上が 「認知症の人」の占める時代に

(図表1)認知症高齢者の現状

認知症高齢者の現状

出典:第115回社会保障審議会介護給付費分科会資料「認知症施策の現状について」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000065682.pdf

(図表2)認知症の人の将来推計について

認知症の人の将来推計について

出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略について」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/04.pdf

 厚生労働省 老健局のデータ(2012年公表)に拠ると、2010年には約280万人とされた「認知症高齢者」の数は2020年には約410万人、2025年には約470万人と推計されている。要するに2010年からの僅か5年間で20%以上増え、更にその15年後には「67%以上、増加する」と予測されていた。ただ、ここでの数字は「日常生活自立度U以上」の推計値であり、「日常生活自立度Tまたは要介護認定を受けていない人」の認知症の人をも含めると、2012年度は約462万人、2025年には約730万人、30年には約830万人にも達すると予測される。何れも「各年齢の認知症有病率が上昇する」ことを前提とした数字だ。

 更に、33年後に当たる「2050年の認知症の人は1000万人を超える」と予測されている。「2016年版高齢白書」によると同年のわが国における「65歳以上人口」割合は約38.8%に達し、総人口は9,708万人にまで減少する見通し。認知症の人が人口の10分の1強を占める時代が到来すると言うのは、ある意味、非常に衝撃的だ。

 医療経営の視点からは急速な需要増により認知症に係る医療・福祉マーケットが年々、拡大していくことは間違いない。それは、医療機関や介護・福祉事業所等、公的サービスに限った現象ではなく、将来的に認知症予防のサプリメントや食品、薬剤、民間保険、見守り家電やロボット、宅配食、人材サービス(見守り、家事代行)、金銭管理サポート、自動運転システム等も含め、新しいサービスや商品等が次々と開発され、一大市場が形成されることになりそうだ。

 一般・精神科病院、「かかりつけ医」等、診療科目を問わず医療機関は「認知症の人」の積極的な受け入れが求められるし、従来は受け入れ困難であった認知症に対応可能な環境や機能整備を図ることが肝要になる。特に慢性期高齢患者の割合が高い中小民間病院や新規開業する診療所は、各医療機関に相応しい認知症医療・ケアの“品揃え”を図り、増加する「認知症の人」のニーズに応えていくことが必要だろう。

(図表3)認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

(図表4)認知症の様態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

認知症の様態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/01_1.pdf

 国は2015年に厚生労働省だけでなく、各省庁横断チームが関与する「新オレンジプラン」(以下、同プラン)を策定。そこで、「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供に移行」との考え方が初めて提示された。「適時・適切な医療・介護」を深読みすると、国が「一般病院や精神科以外の医療機関、介護施設にも合併症のある認知症の患者さんを積極的に受け入れて欲しい」との強い意思表示がこめられているように思う。それを推進する仕組みとして、2016年度診療報酬改定で「認知症ケア加算1・2」が新設され、また同プランでは「適時・適切な医療・介護」を推進するために2018年度からは全市町村で「認知症初期集中支援チーム」の設置や、「認知症地域支援推進員」の人数目標等が織り込まれ、外堀が徐々に埋められている。

 認知症に係る制度改正の内容については後述するとして、まずは筆者が近年、取材した事例を基に認知症医療の現場における変化を追ってみたい。