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看護師ら医療専門職の採用や離職防止に貢献する病院内保育所〜院内保育の現状と課題、財政支援の新機軸「地域型保育給付」とは?


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

保育所運営は1医療施設当たり1224万円の赤字

 2016年で「男女雇用均等法」が施行されて30年目になるが、共同通信の調査によると、大手企業に入社した幹部候補の女性総合職一期生のうち、2015年10月時点で約80%が退職していたことが報道された。育児・介護休業法が制定され、30年前と比べて職場は大きく“様変わり"したとされる。昔と比べ結婚退職は減少したとは言え、女性が仕事と子育てを両立する企業内保育所の設置、長時間労働の是正等は、規範にすべき大企業ですら、まだまだ遅れている実態がある。
 看護師を始め女性職員の割合が高く、夜間・休日保育のニーズの高い医療機関の場合は、他の業種に比べると、比較的、保育所の設置等の子育て環境の整備に、いち早く取り組んできた業種の一つであるように思われる。それでは日本の病院で院内保育所を設置している施設は、どの位の割合に上るのだろうか?少し古いデータだが、日医総研が2008年に発表したワーキング・ペーパー「院内保育所を含む医師就労支援に関する調査」(主任研究員・江口成美ほか)が、もっとも調査規模が大きく、精緻に分析されたデータだと思うので引用したい。同調査は国内全病院(8902施設)に郵送調査し、4187施設(47.0%)から有効回答を得たもの。それによると、2007年12月時点で約31%の病院が院内保育所を設置していた(図表1)。

図表1 院内保育所の設置状況(n=4,187)4
図表1 院内保育所の設置状況(n=4,187)  

 病床規模が大きくなる程、乳幼児を持つ職員の数も多いことから、必然的に院内保育所のニーズも高く、保育所設置割合も高い(図表2)。

図表2 院内保育所の設置状況−病床規模別(n=4,071)
図表2 院内保育所の設置状況−病床規模別(n=4,071)  

また保育所の平均定員数(n=1117)は22.9人だった。
 同調査で「院内保育所を運営する上での課題」(n=1297複数回答)として「運営にかかる費用負担が大きい」(71.6%)が特段に高く、「院内保育所等のスペースが狭い」(35.9%)が続く。また設置していない病院の理由(n=2517)としては、「適切な場所やスペースを確保出来ない」(47.8%)、「経費がかかる」(44.0%)とコストの負担や保育所スペースの確保に苦慮する現実が、浮かび上がって来る。更に同調査にて2007年における院内保育所運営に関する収支を出しているが(n=933)、1施設当たりの平均で収入が723万円に対し、費用は1946万円と、年間1224万円の持ち出しとなっていた。そのうち人件費は1612万円で、費用の85.0%を占めていた。(図表3・4・5)

図表3 院内保育所を運営する上での課題(n=1,297 複数回答)
図表3 院内保育所を運営する上での課題(n=1,297 複数回答)
図表4 設置していない理由(n=2,517 複数回答)
図表4 設置していない理由(n=2,517 複数回答)
図表5 院内保育所運営に関わる年間の費用・収入等(n=933)
図表5 院内保育所運営に関わる年間の費用・収入等(n=933)

 また院内保育所の運営に関しては、これまで国公立病院を除き「病院内保育所運営事業」という補助金事業が存在したが、同調査で補助金を受けている病院は約51.5%に過ぎず、そのうち補助金が人件費の2割未満の医療施設の割合が全体の7割以上を占めていることも明らかになった。どの病院にとっても利用料金だけでカバーするのは困難であり、赤字を前提に検討すべき事業であることは間違いなさそうだ(図表6)。

図表6-1 補助金は人件費の何%をカバーしているか
図表6-1 補助金は人件費の何%をカバーしているか  
図表6-2 補助金制度の認知度と受給状況(国公立を除く、院内保育所を設置している施設 n=969)
図表6-2 補助金制度の認知度と受給状況(国公立を除く、院内保育所を設置している施設 n=969)