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病院経営に「貢献」する情報発信のカタチ〜具体的な経営効果をもたらした3つの事例から


[事例2]病院の“魅力”を強調した「求人広報」活動が「7対1」看護届出に結実
 (広島県東広島市・井野口病院)

 (医・社)井野口病院(188床)は東広島市に在るが、同市には看護学校が無く、看護師確保に関しては、これまで苦戦を余儀なくされてきた。2006年の診療報酬改定で、「7対1」看護入院基本料が導入されてから近隣の病院で看護師獲得競争に拍車がかかり、同院では新卒採用がゼロの時期もあり、「10対1」を維持するのがやっとの状態で推移してきた。
 中核都市から離れた地域に在り、知名度も決して高くはないことから、病院説明会でも人が集まらず、実習病院としての繋がりがある大規模病院には勝てない状況が続いてきた。
 こうした苦境の中で、同院では看護学生を“惹きつける”求人広報活動が必要と考えた。
 そこで基本に返って同院に勤務している看護師が「なぜここで働いているのか?」と問うアンケート調査を実施することにした。その結果、同院の魅力が「明るく、風通しの良い職場風土」であることが明らかになった。それは「家族的な勤務環境」と言い換えることも出来る。
 同院が求職ガイダンスで使用する病院ガイドには、過去には卒後教育の内容やキャリア・アップ支援、子育て支援等を羅列していたが、これらの取り組みは大規模病院でも実施していることで、特に差別化が図れていたわけではない。同院の“魅力”をよりアッピールするために、「井野口病院が好き!」と言う目を引くキャッチコピーを使った。更に働く先輩ナースの明るく、生き生きした表情の写真を多用。ブースに来てもらった看護学生には、同院の発行する広報誌「マンスリー井野口」を手渡した。同誌には看護師の研修会風景や教育、同好会の内容等が、分かり易く掲載されている。また各看護学校に張ってもらうポスターにも、同院で勤務するOBに在校生に向けてのメッセージを書いてもらった。
 その結果、病院見学説明会の参加者が増加し、同説明会では先輩ナースとのお茶の席を設け記念撮影も行った。また同院では2013年春からデジタル・サイネージを導入。その中には、中途採用者の紹介や互助会イベント、職員のサークル活動に福利厚生のお知らせ、職員のお誕生日祝い、ペット自慢に加えて、広報誌のダイジェスト版等を掲載し、“明るい職場”の雰囲気が伝わるような工夫をした。これらコンテンツは院内コミュニケーションの円滑化にも功を奏し、“働きやすい、風通しの良い”職場づくりにも貢献した。
 これらの取り組みにより、ここ2年間は離職率が低下し、病院見学説明会の参加者や新卒採用者が急増。具体的な“成果”として、看護師数が充足し「7対1」届出が可能になった。病院職員全員による“知恵の結集”が、成功に導いたと言えよう。

[事例3]『DPCマンスリー』でチーム医療を推進  広報ツールから経営戦略ツールへの道
 (福岡県北九州市・製鉄記念八幡病院)

 (社医)製鉄記念八幡病院(453床)は1900年の開設で、116年もの歴史を持つ中核的な地域医療支援病院。高度急性期病院として2006年からDPCを導入したが、翌07年より全職員にDPCに関する正しい理解とチーム・アプローチを押し進めるために、『DPCマンスリー』と名付けられた院内ニュースを、毎月、編集・発行するようになった。
 「医療の質」の改善には①コミュニケーション②情報の共有化③チーム・マネジメント――の3つの視点が重要だが、DPCのチーム・アプローチには未だ課題が残っていた。特にDPC活動の院内全体への周知と浸透、成果測定の難しさ、活動推進のコーディネーター役の不在等が挙げられた。これらの問題解決に向けて、『DPCマンスリー』による院内広報が着目された。
 医事課職員がコーディネーター役となり、DPCデータの可視化や情報の共有化を進める中で、成果のフィードバックを行うに当たって同マンスリーは有効なツールとなった。
 体裁はA4サイズ・オールカラー1ページで、ビジュアルを重視してイラストや図表を数多く使用し、読み易い工夫を加えた。注目すべきは全職員への情報発信で、E−メールやイントラネット、プリント・アウトして配布する等、多様な方法を取っている。2013年11月段階には第84号を数えた。
 一方通行的に情報発信するだけでなく、医事課職員が同マンスリーを使用して医師への説明会開催や、各科カンファレンスにも参加する等、チーム医療の推進に有効に役立ててきた。一つの例として、栄養管理部門から「特別食のオーダーが増えない」ことに対して問題提起が行われた。推進出来ない問題点の抽出や改善点を全員で洗い出し、院内全体に協力を呼びかけて、チーム医療を推進。その結果、栄養管理部門が医師との直接のコミュニケーションを図り、特に外科部門では特別食のオーダーが倍増した。また同マンスリーの活用で、医局、看護部門、リハビリ・検査部門、医事課等の各部署が可視化されたデータを共有して、多職種が自発的なアクションを取れるようになり、PDCAサイクルの実現が可能になった。同院広報担当者の発表では、同マンスリー導入の経済効果を独自に試算したところ、一昨年は約4200万円、昨年度は約7000万円の収益増に結び付いたとのこと。院内広報ツールにとどまらず、経営戦略ツールとしての力を発揮しているようだ。なお同院の発表は優秀賞に輝いた。
(注)何れの事例も同フォーラムが行われた2013年11月段階の情報です。