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病院経営に「貢献」する情報発信のカタチ〜具体的な経営効果をもたらした3つの事例から


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

 HIS広報プランナーの育成や、病院の企画・広報機能の第三者評価事業を実施しているNPO法人「日本HIS研究センター」は、独立行政法人・岡山県精神科医療センター(中島豊爾理事長・名誉院長)との共催により、2013年、11月に倉敷市で『HISフォーラム2013 in 岡山』が開催した。同大会の目玉となる「第17回全国病院広報研究大会」では、第一次審査を通過した11の病院が事例発表を行った。今回はインターネット等、各ツールとのメディア・ミックスによる戦略的活用事例、例えばフェイスブック等のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)やYou-Tube、更にデジタル・サイネージ等の動画ツールを導入する病院が多くを占め、広報テクノロジーの進化が顕著になってきた。
 加えて病院独自の取り組みが、どのような経済効果をもたらしたかのアウトカムを提示し、実際の病院経営の“成果”に言及する事例発表が多かったのが印象的だった。
 同大会で各審査委員から高く評価された3つの病院の事例をレポートする。

[事例1]地域住民に適正受診を促す地域医療サポーターを独自に認定
 (福岡県飯塚市・麻生飯塚病院)

 ㈱麻生 麻生飯塚病院(1260床)は地域で唯一のER(救命救急センター)を有する同市の基幹病院であり地域医療支援病院。この地域では、数年前から近隣の医療機関で、医師や看護師の不足による「診療科閉鎖」や、「入院受入能力低下」が顕著になってきた。
 同院への負担が増したことで、ER受診者の約8割が軽症患者で占められる事態を招き、こうした状況が常態化すると、地域医療の崩壊を招きかねない。地域唯一のERを円滑に機能させるために、病院として地域住民に適正受診を促す広報活動が必要と考えるようになった。そうしたことから、地域住民が当事者意識を持ち、限られた医療資源を有効に活用してもらうことを目的に、2010年3月より「地域医療サポーター制度」をスタートすることになった。
 同サポーター制度とは分かり易く言うと、①自分の健康は自分で守る(病気の予防)②医療機関と上手に付き合う(適正受診)――の2つの視点から、実践・周知してくれる仲間を地域で養成し、認定しようとする試みだ。同サポーターとして認定されるには、2ヵ月に1回の予定で開催される「地域医療サポーター制度」を年間3回、受講することが必要になる。同サポーターにはレギュラー、ゴールド、プラチナの3種類があり、レギュラー・サポーターの活動実績によって、ゴールド、プラチナへとグレード・アップしていく仕組みだ。具体的にはサポーター・ミーティングへの積極的な参加や、サポーター自身が自発的に講演機会を作り、地域住民への啓発活動に努める。2013年11月段階で、レギュラーが591人、ゴールド110人、プラチナ6人が認定を受け、地域で活動を続けている。同院広報担当者の発表では、サポーターに関する新聞、テレビ、雑誌等のメディア取材は過去38件、広告費に換算すると700万円を超える経済効果があり、見学・講演等の依頼が12件にも及び、非常に高い注目が集まったことが分かる。
 更にER受診者の約4割を占める小児軽症患者へのアプローチとして、小児の病気への基礎知識や対処法を医師がレクチャーした動画を制作。この動画は同院の入院患者向けTVの無料チャンネルに加えてホームページ、YOU-TUBE、フェイスブック、地元の制作会社が運営するデジタル・サイネージでも配信された。これらの取り組みの成果として、2009年をピークにERの一次受診者が減少する一方で、二次・三次受診者数は増加傾向で推移し、ERとしての本来の機能を発揮出来るようになった。
 この活動に刺激を受けた他県の高度中核病院でもプロジェクト・チームが作られ、同サポーターと同様の取り組みが最近、始まったばかりだ。ちなみにこの発表は、同研究大会で最優秀賞に輝いた。