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医療機関におけるICT導入の実際
 〜地域包括ケア・システムにおける具体的な運用とは?


公開情報セキュリティ監査人/プライバシーマーク審査員研修主任講師
小川 敏治先生
(聞き手:医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 今後、整備が進められていく「地域包括ケア・システム」の中で、ICTを利活用した情報連携は今後、大きな広がりを見せていくと予想されます。ICTの専門家である小川敏治先生に、地域医療におけるICT活用の要諦、更に2015年改正される「個人情報保護法」や、2015年度に導入された「マイナンバー制度」に関して、医療機関が留意すべきポイントを中心に、お話を伺いました。

コストや補助金をかけないで持続可能なシステム構築を目指す

――近年、ICT(情報通信技術)というキーワードが、IT(情報技術)に替わって、様々な局面で使われるようになってきました。ICTとITの違いについて、教えて下さい。

小川:そもそもIT(情報技術)とは、当時の通産省(現在は経産省)が経済産業の活性化施策の中で使い始めたのですが、後に“通信”や“ネットワーク”を意図するC(コミュニケーション)の注目度や重要性が増し、ICT(情報通信技術)と呼ばれるようになりました。
 現在、ICT関連の予算を持っているのは、文科省、総務省、経産省、厚労省の4つの官庁ですが、地域包括ケア・システム(以下、同システムに略)で不可欠なICTの監督官庁は総務省であり、厚労省の役割は基本的なルールづくり、医療情報に関する安全管理のガイドライン策定や在宅医療・介護の情報共有の標準化等、調査研究に関する部分です。今では経産省よりも、総務省が圧倒的に大きな予算や権限を握っていると言えるでしょう。  ICTとはデータを自由に作成・閲覧可能なイメージがありますが、病院間のネットワーク・システムの中では、現状、自院のデータを自院の判断でディスクローズ可能な範囲を決め、それを公開サーバーに入れて、他の医療機関が参照する仕組みです。
 ICT導入には莫大な初期投資とランニング・コストが必要になるのです。以前であれば国も十分な予算を確保することが出来たのでしょうが、今後は国家財政の厳しい中、予算も縮小される可能性が高いので、経済的な効果を勘案して、厚労省は費用対効果の高く低廉で、持続可能なシステムの構築を目指しているのではないでしょうか。

――2014年に成立した「医療・介護総合確保推進法」で、初めて同システムの位置づけがなされましたが、様々な事業体の連携の中でICTがどのように利活用されるのかが、今後の重要なテーマになってくると思いますが。

小川: 厚労省も同システムでクラウドの活用を謳っており、地域全体で共通に使用出来るツールとしてクラウドを使い、連携の基盤づくりを進めようとの流れです。実際に連携するとなると厚労省が出した「医療情報システムに関するガイドライン」のバージョン4.2が非常に厳格な運用を求められるので、完璧に導入しようとすると、相当な初期投資と維持費用がかかってしまうのです。地域の中堅病院が都道府県の地域医療再生基金を活用して初期費用に充てるとしても、当該病院と連携する診療所や小規模病院等のコスト負担がどうなるかという新たな課題が浮上するわけです。ただ「機能分化して連携せよ」と言うだけでは、仕組みは動きません。他の事業所と連携して全体最適の仕組みを作っていくには、何処かの事業所が不利益を被るケースも出て来ます。診療報酬や介護報酬だけでは労力に見合わない事業所に対しては、きちんと基金等で経営支援することを考えていかないと、同システムは根付かないような気がしています。