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2016年診療報酬改定で示された「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」の展望と現場での影響


医療ジャーナリスト:冨井 淑夫

「かかりつけ」三兄弟から五兄弟に拡充

 2013年8月に公表された「社会保障制度改革国民会議報告書」では従来の「病院完結型」医療から、患者の住み慣れた地域や自宅での生活のための医療、地域全体で治し支える「地域完結型」医療への転換が明記された。「地域包括ケア・システム(以下、同システムに略)構築」の必要性が初めて示されたのだが、同システム構築の目標年次である2025年に向けて、厚生労働省は全国5712ヵ所の同システム整備を目標にしている。
 (公社)日本医業経営コンサルタント協会 地域包括ケア専門部会委員長の美留町利朗氏は、次のように指摘する。
 「25年に向け国が作ろうとしている地域の将来像は、高齢者の住まいの近くに“かかりつけ”の医師・歯科医師・薬局が存在し、この“かかりつけ”三兄弟が連携して、地域の方々の健康づくりをサポートしていく姿です。在宅のお年寄りが病気で入院しても状態が安定すれば、在宅に戻し三兄弟が他の医療・介護資源等との連携の下に患者さんの在宅療養を支えていく仕組みが出来れば、同システムの実現は可能なのです。そのコーディネーター役を期待されるのが市町村と地域医師会です。先駆事例として知られる千葉県の柏プロジェクトでは、柏市と市医師会が中心となり、多職種連携の仕組みづくりを進めてきました。」そして、2016年診療報酬改定では同システムの推進に向け、初めて「かかりつけ」歯科医師・薬剤師(薬局)に係る評価が新設された。2年前の改定で主治医機能の評価として、「地域包括診療料・地域包括診療加算」が導入されたので、美留町氏が言う第一歩としての「かかりつけ」三兄弟の診療報酬は出揃ったことになる。
 更に今改定では後述するが「認知症」に関する主治医機能と、小児科の「かかりつけ」医機能を評価する診療報酬(小児かかりつけ診療料)も新設された。「かかりつけ」三兄弟から、五兄弟への拡充だ。そして、それらの制度設計の多くに国が予算管理をし易い包括制の仕組みが導入されたことに着目したい。
 国が「かかりつけ」機能の推進に注力する背景には、同システムの構築だけでなく、14年の前回改定から継続する「一般外来の縮小」施策と連動している。前回改定では大病院に対して、「紹介率・逆紹介率の引き上げ」や「長期投与の是正」等が実施されたが、今改定から「特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院」に対して、現行の選定療養費に加えて、紹介状なしの初診については5000円(歯科は3000円)、再診(初診時に紹介を行う申出を行ったにも関わらず受診)については2500円(歯科は1500円)が徴収される。当該機能・規模の病院に対しては療養担当規則を改正し、「現行の選定療養に加え定額徴収を責務にする」と明記されているから、厚生労働省の“本気度”が分かろうというもの。一応、「緊急やむを得ない事情がある場合」の救済措置が設けられてはいるものの、多くの患者にとって、5000円の負担は、相当、重いことには間違いない。外来患者の“大病院離れ”に一層、拍車がかかりそうだ。
 ある厚生労働省OBは「急性期の大病院に対しては、今後の改定でも、更に外来受診抑制策は強化されていく。診療報酬で勤務医や看護師の負担軽減策というメリットを与えたのだから、一般外来を縮小し専門外来・紹介外来に集中するのは当然の責務。病院退院後は早期に主治医や200床未満の病院へと紹介していけるように、主治医機能を重点評価する流れは、今後の改定でも変わらない筈」と結論づける。

「多剤投与の抑制」が主眼の「認知症主治医機能」評価

 それでは改定や新設された「かかりつけ」に関連する診療報酬改定項目を検証していくことにする。前回改定で出来た「地域包括診療料」(1503点・診療所と200床以下の病院と「地域包括診療加算」(20点・診療所のみ)は点数そのものに変化がなかったが、何れも「常勤医師数3名→2名」に。同診療料に関しては、病院の場合「二次救急医療機関・輪番制病院等の施設基準を削除」する形への施設基準の緩和が実施された。
 2014年7月時点で同診療料算定施設は全国で122施設、同加算は6536施設に留まっていることから、「かかりつけ医」機能の更なる普及を図るための基準緩和だ。200床未満病院のある事務長は、「同診療料に関しては、この2つの要件が明らかに届出のネックになった診療所や中小病院の多かったことから、ハードルが下がったことで算定施設は増加するのではないか」と予測する。実際に無床診療所で「常勤医3名」という施設は少ないが、親子二代、或いは夫婦ともにドクターで切り盛りしている診療所は全国各地に数多く、存在している。それらの診療所では医師を増員しなくても届出可能になるし、大学病院等で勤務する二代目のドクターが「総合診療医」等の教育・研修を受けて、早期に実家の診療所に戻り、大先生と協力して「主治医」機能を担う動きが加速するかもしれない。噂された「院外処方の場合の24時間開局薬局との連携」や、「対象4疾患のうち2つ以上」の要件変更は行われず、前述2つの緩和以外に関しては、従来通りとなった。
 今改定の目玉として注目されるのは、認知症に対する主治医機能の評価として新設された「認知症地域包括診療料」(1515点)と「認知症地域包括診療加算」(30点)。前提条件として前者は「地域包括診療料」、後者は「地域包括診療加算」の届出を行なっていること。それらの点数よりも各々12点・10点高く設定されている。その他の算定要件としては、「認知症以外に診断のついた1つ以上の疾患」があり、当該医療機関で「1処方につき5種類を超える内服薬、更に抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬を合せて3種類を超えて含むもの」に関して、「何れの投薬も受けていない」こと。噛み砕いて言うと、合併症を有する認知症患者に対し「多剤投与の抑制」に最大のインセンティブを置いたものだ。幾つかの医療機関経営者に取材すると、この「投薬に関する要件のハードルが高いために、算定出来ない医療施設が多いのではないか」との意見が大勢を占めた。