Home > 経営管理講座 > 2012年同時改定の重要ポイント 2025年の大改革に向けてのプロローグ(PAGE 3)

2012年同時改定の重要ポイント 2025年の大改革に向けてのプロローグ

第3次障害福祉計画で退院・地域移行の促進 精神科医療施設からの相互連携が評価

 スペースの都合で全てを紹介することは出来ないが、精神科医療に係わる重要な項目をみていきたい。2004年の『改革ビジョン』で厚生労働省は10年間で、約7万床の精神科病床を削減する目標を打ち出した。残されたタイムリミットが2年後に迫る中、第3次障害福祉計画(都道府県)では、精神科病院からの退院、地域移行を促進し、社会的入院の解消を進めていくため、2つの「着眼点」が設定されている。
 一つ目は平成26年度における1年未満入院患者の平均退院率を、改革ビジョン以来の目標値(76%)達成のために、現在より7%相当分増加させること二つ目は5年以上かつ65歳以上の退院者数を平成26年度には現在よりも20%増加させることを指標としている。
 こうした目標値に向けて精神保健医療政策が進められていくが、診療報酬設計もこの流れに沿って、前回の改定から引き続き“収容”ではなく、“治療”を重視する傾向が格段と強まっている。
 精神科の急性期入院医療では、精神科身体合併症管理加算(1日につき)が350点から450点に引き上げ。加えて、これまで入院基本料等加算だった児童・思春期精神科入院医療管理加算(800点)が廃止され、特定入院料の児童・思春期精神科入院医療管理料(1日につき2900点)として新設。20歳未満の精神疾患を有する患者を概ね8割以上入院させる病棟または治療室で、病棟または病室単位で算定出来るようになった。この他、小児医療及び児童思春期の精神医療専門の常勤医師2名以上等、施設要件が細かく規定されている。
 精神科急性期医療で最も注目すべきポイントは、精神科救急医療機関と後方医療施設との連携、要するに相互の転院・再転院に伴う新機軸が生まれたこと。
 精神科救急搬送患者地域連携紹介加算(退院時1回)1000点と精神科救急搬送患者地域連携受入加算(入院初日)2000点が新設。精神科救急医療機関へ緊急入院した後、状態の落ちついた患者について、予め連携している精神科医療機関に転院させた場合に前者、その転院を受け入れた精神科医療機関に後者が算定出来る。前者は精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料の届出を行っている医療機関、後者は精神病棟入院基本料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料の届出を行っている医療機関が算定可能だ。両者共、連携先医療機関で患者の転院受入体制に関する協議を予め行っていることも求められる。
 また専門の診療科を超えた連携という視点から、一般急性期医療を担う医療機関から精神病棟入院基本料届出の精神病棟が転院を受け入れた場合に救急支援精神病棟初期加算(14日以内、1日につき100点)が新設された。算定要件としては救急搬送患者地域連携受入加算または精神科救急搬送患者地域連携受入加算算定患者が対象となる。
 救命救急センターでの自殺企図等、重篤な精神疾患患者を受け入れた場合の「救命救急入院料」(3000点)が、当該医療機関に所属しない精神保健指定医が診断治療を行った場合にも、算定出来るように要件緩和された。要するに救命救急センターと近隣の精神科医との「連携」が評価されるようになったのだが、今後続く改定では精神科医療でも、診療科を超えた相互の連携が更に評価されそうだ。そうしたことを考えると、精神科医療施設も地域連携室や、連携担当職員の情報収集力の深度が問われる。地域の医療機関の特徴や機能を知るだけでなく、どのような診療報酬の届出を行っているのかに関しても、アンテナを張っておくことが大切。常に連携先医療機関を訪問し情報収集に努めると同時に、転院受入体制の会議等も常に招集出来るような関係を、日頃から構築しておくことが肝要だ。  

療養病棟入院料はGAFスコアに応じた傾斜配分 精神科・認知症共に「退院支援」を重点評価

 慢性期患者を対象とする精神科療養病棟に関して、前回の改定で40点の引き下げが実施され厳しいものとなった精神療養病棟入院料(1050点)の点数は据え置き。ただ従来の重症者加算(40点)が重症者加算1・60点、重症者加算2・30点という形で、二段階に再編。GAFスコア30以下は1、40以下が2という形で、同スコアに応じた傾斜配分が導入された。診療報酬全般のアウトカム評価への流れから、今後の改定では、GAFで集積されたデータを指標にして、重症患者を受け入れている病棟への重点評価が、更に強化されていくのではないだろうか。
 今回の改定では、急性期病棟と慢性期病棟に別立てに設定されていた「退院調整加算」が同1・2という形で再編されたが、精神科療養病棟でも「退院調整加算」(退院時・500点)が新設された。「精神科療養病棟で退院支援部署による支援で退院を行った場合」の評価だが、専従の精神保健福祉士ともう一人、看護師、作業療法士、精神保健福祉士、社会福祉士または臨床心理技術者の何れかの専従者が必要になる。急性期、慢性期、精神科を問わず、早期退院・地域移行への流れで、退院調整部門がどこの医療機関にとっても必要不可欠な機能になっていくのは間違いない。また精神保健福祉士や社会福祉士といった専門職の活躍出来る場が更に拡大することは、こうした職種の人達にとっては朗報だし、意欲向上にもつながっていくだろう。
 最後に認知症についても少し触れたい。認知症治療に関しても、入院医療は早期退院・在宅移行、退院調整に対する誘導が顕著に目立つ。認知症治療病棟入院料1・2に関して、前回改定では入院60日を境で点数に差が付けられていたが、今回からは30日を境に大きく傾斜配分した点数設定を導入。例えば(1)の場合はイ・30日以内・1750点、ロ・31日〜60日以内・1450点、ハ・61日以上・1160点(2)イ・同・1270点、ロ・同・1070点、ハ・同・950点。要するに何れも30日以内の入院であれば大幅にアップし、31日以上60日以内であれば据え置き、61日以上ではダウンという、非常に分かり易い点数設定だ。これは入院後6ヶ月以内に退院した患者群と、6ヵ月以上の患者群共に「入院1ヵ月時点でBPSD(行動・心理症状)はほぼ改善している」との臨床データに基づき、専門家からBPSDの治療に要する期間は「約1ヶ月が妥当」と判断されたことによる。加えて同入院料の包括範囲として人工腎臓が追加されたが、これらは短期集中的な治療により早期退院を促す誘導策と言えるだろう。
 同入院料の退院調整加算が従来の100点から3倍の300点に大幅アップ。そして施設基準の中に、ここでも退院支援部署の設置が義務づけられ、人員配置は精神科とほぼ同様。
 この他、認知症夜間対応加算(1日につき84点)を新設。夜間に十分な看護補助者を配置して、手厚いスタッフで認知症看護を実施している認知症治療病棟を評価する。
 認知症治療の外来診療の評価として、前回改定で新設された認知症専門診断管理料は、従来の500点から同管理料(1)700点(改)、(2)300点(新)と二段階に再編。認知症疾患医療センターのような専門医療機関が、(1)は他の医療機関からの紹介患者に鑑別診断を行って、認知症と診断された場合に認知症療養計画を作成し、紹介元に逆紹介した場合に算定。新設の(2)は他の医療機関からの紹介でBPSDが増悪した患者に、診療を行った上で、紹介先の医療機関に逆紹介した場合に、3月に1回に限り算定出来るもの。精度の高い鑑別診断により、認知症の早期発見と早期治療を、これまで以上に推進することを目指した改定だ。また認知症専門医療機関で(1)を算定した患者に、かかりつけ医が専門医療機関と連携して、当該患者のサポートを行った場合の評価として、認知症療養指導料(350点・月1回、6ヶ月まで)を新設。これらの新機軸導入は、一人ひとりの認知症患者を連携により、「地域全体で診ていく」仕組みづくりへの誘導だ。
 相互連携の誘導によって、かかりつけ医を受診した患者に認知症の可能性がある場合は、認知症疾患医療センターに送り、「物忘れ外来」等で早期診断を行って、またかかりつけ医に返し、一定期間を経て改めて認知症疾患医療センターでチェックするという、双方向の「循環型地域連携パス」の普及が期待出来そうだ。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)