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スタッフを引きつける医療施設の“魅力度”を徹底研究
 ―働きやすい医療施設の条件

働くスタッフから見た  医療施設の「魅力度」とは?

 雑誌では「患者が選ぶ専門病院」等の特集企画が組まれ、医療施設の「魅力度」に注目が注がれている。ただ現在のように全国各地で医師・看護師不足に起因する医療崩壊が社会問題化する中で、患者から見た「魅力度」に加えて、病院で働く職員から見た「魅力度」の視点が重要になってきていると思われる。
 様々な資格職、専門職によって構成される病医院という事業体にとって、医療従事者の職業意識や価値観は千差万別であり、全ての職員の要望を取り入れた運営は“至難の技”と言わざるを得ない。筆者は2年程前に複数の医療法人立病院でES(職員満足度)調査に係り、約600人の病院スタッフ(管理職は除く)の声を直接聞いたが、当該調査から得られたデータから、最大公約数的な「魅力ある病院の条件」を10項目抽出し解説したい。また参考のために、各項目の中で実際に病院が実践している、ケース・スタディ(事例研究)を幾つか紹介する。

①週休2日制は必須条件・有給休暇が消化しやすく時短等を積極的に導入。

 最近では、国公立病院と同様に民間病院でも週休2日制(4週8休)は定着してきたが、個々の病院の職員採用事情等によって、実現出来ていない中小民間病院も少なくない。特に他の専門職は別として、どこの病院も医師の完全週休2日制導入には苦労している。若い職員の休日に対する要望は年々高くなり、面接時で最初に確認することが多い、職場選択の最低条件にもなっている。
 時代の流れを踏まえて出来る部署から段階的に時短や週休2日制を実施し、それに合わせて業務の合理化を図り、勤務体制を組み直していくなどの工夫が必要だ。また各部門の長とスタッフの合意があれば、何時でも有給休暇を取れる融通性のある労務管理が、職員のやる気と和を生み出す。

(ケース1) 地方都市のJ病院は「連続休暇奨励規定制度」を導入。さらに毎月4日間を「ノー残業デイ」に設定し、労働時間短縮に尽力している。情緒論ではなく具体的に院内の制度として規定し、定着させていくことが大切だ。

②保育室や育児休暇等、女性のための労働環境が整備されている。

 ①とも関連するが、看護師等の女性の多い職場では、産休はもとより育児休暇、介 護休暇の導入など、子どもを持つ女性職員が長く働ける職場環境整備が不可欠であるのは言うまでもない。保育室が院内にあれば安心して働けるという女性の声も多く、施設的・経済的に自院で保育室を確保するのが困難な場合は、保育料の一部を病院で負担する等の次善策を検討すべきだろう。
 NPO法人「女性医師のキャリア形成・維持・向上をめざす会」が、『女性医師・全て の医療従事者にやさしい病院』の評価事業を実施しており、2008年11月までに全国12病院が認定を受けている。女性の“働きやすい”労働環境整備に尽力されている医療機関は、病院のステータスを高めるためにも、こうした認証を受審するのも一考である。

(ケース1) 都心部のS病院では、女性の母性保護という観点から生理中の就業禁止を実施。またお産をする女性のためには産前・産後各8週の産休と、1年間の育児休暇を導入している。同院の看護師長は「あくまでも身体面の性差を踏まえた男女平等の考え方が必要」との見方を示す。その結果、同院では出産を理由に退職する看護師が激減した。
(ケース2) 早い時期に「7対1看護体制」を実現した都市部のC病院は、病児保育を行う365日・24時間対応の付属保育所設置や出産した職員の職場復帰支援プログラムの実施、子育て手当ての支給等、多面的に子どものいる女性職員が働きやすい環境づくりに努力している。
(ケース3) 社会の要請により男性の子育て支援システムの拡充も必要とされる時代だが、Y病院では男性の育児休業の導入に積極的に取り組み、2年前に厚生労働省所管の21世紀職業財団から、「男性の育児参加促進事業実施事業主」の指定を受けた。病院で働くシングルファザーの増加を踏まえて、お父さん達への支援も考えていこう!

③職員のニーズを考慮した寮や旅行等、福利厚生が充実している。

 職員寮に対する需要はあるものの、昔風の管理人付きで門限があり、二人部屋で自由とプライバシーが侵害されるような施設は敬遠されることが多い。
 どちらかと言うと最近では、民間のマンション等を借り上げたような独立型の職員寮が若者には好まれる傾向が強い。自前で看護学校を開設した都市部の総合病院では、病院の向かいに全室個室(1DK、バストイレ付き)の看護師寮を新設。交通の便が良く家賃は2万円と超安値で人気も高いため、退寮者は少ない。実際に地方出身である若い看護師の親御さん達には、安全管理の行き届いた看護師寮への要望が根強い。
 職員旅行や忘年会等も、管理者側が一方的に行き先や日程を押し付けるタイプの形式は敬遠され、職員で構成する旅行・レクレーション委員会等に自主的に企画・スケジュールを決定させる病院が増え始めている。近くのスポーツクラブ等の法人会員となって、職員が自由に利用できるようにする等、あくまでも「職員のための」福利厚生であることを念頭に置くべきである。

(ケース1) 福利厚生の充実で有名なN病院は、夜間にも利用出来るリラクゼーションルームを設置し、職員がリフレッシュ出来る環境づくりを行っている。また国内や海外にコンドミアムを所有し、病院職員は家族と共に利用出来る環境を整備。これらの施設の毎月の維持費は人件費・光熱費を含め200万円をオーバーするが、「職員の雇用・定着対策としての先行投資」(事務長)と捉えているという。

81(12.09.07)