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2010年診療報酬改定の影響を徹底検証する

勤務医の負担軽減策と処遇改善が従来の3項目から8項目まで対象拡大

 昨年4月、民主党等連立への政権交代後に初めて実施された「2010年診療報酬改定」は、周知のように10年ぶりのプラス改定(全体で+0.19%)で決着。歯科・調剤を除く医科全体(+1.74%)のうち、入院+3.03%、外来+0.31%と明らかに「急性期病院に手厚く、無床診療所には厳しい」内容となった。財源の割合として急性期入院医療に約4000億円の予算が重点配分されたのに対して、外来は約400億円のみ。一方、政治的配慮からか歯科は+2.09%(約600億円)と“異例の”引き上げで、そのあおりを受け微増に留まったのが、医科診療所と調剤(+0.52%・約300億円)であった。
 今改定の内容で特徴的だったのは厚労省の社会保障審議会が重点項目として掲げてきた救急・周産期・小児医療と外科系の手術料等に関して、例年の改定では考えられない程の大きな引き上げとして表れたことだ。特に入院医療を充実させる観点から、「病院勤務医の負担軽減」と「チーム医療によるアプローチ」を徹底追求した改定内容となった。
 この2つのコンセプトは密接に関連しあっているのだが、「病院勤務医の負担軽減及び処遇の改善を要件とする項目」を具体的に見ると、従来の改定では●入院時医学管理加算●医師事務作業補助体制加算●ハイリスク分娩管理加算の3項目だけだったのが、今改定では●(入院時医学管理加算改め)総合入院体制加算●医師事務作業補助体制加算●ハイリスク分娩管理加算に加えて、●急性期看護補助体制加算●栄養サポートチーム加算●呼吸ケアチーム加算●小児入院医療管理料1・2●救命救急入院料――の8項目まで対象が拡大されているのに注目したい。
 全ての項目に触れることは出来ないので、2010年改定で主に急性期・精神科・診療所の3点に絞り、重要と思われる新機軸を幾つかピックアップし、筆者が取材した病院関係者や専門家等の意見、決定に至るまでの中医協の「舞台裏」等も織り込みながら、個別の改定項目を検証してみたい。

急性期一般病院

医師事務作業補助への重点評価中小民間病院でも算定し易い要件に

 「病院勤務医の事務作業を補助する職員の配置に対する評価」として、前回改定で位置づけられた医師事務作業補助体制加算(入院初日)が、これまでの4区分から6区分に変更され、最高レベルの「15対1」は810点と極めて高い点数が付いた。
 前回08年改定でも注目を集めた、メディカル・クラークの配置をマンパワーにより評価したものだが、従来は最高の「25対1」でも355点しか付かず、一番低いレベルの「100対1」では僅か105点だったため、中小民間病院経営者からは「大病院に有利な点数設定で、小規模病院はクラークの人件費にもならない」と不満の声が高まった。
 今改定では「25対1」でも490点と135点の引き上げ、「100対1」ですら30点以上の引き上げだ。これまで「50対1」を届出していた中小民間病院の院長は「従来の要件で“25対1”を算定できたのは三次救急医療機関や小児救急医療拠点病院、総合周産期母子医療センターに限定されたが、今改定より年間緊急入院患者200名以上(または全身麻酔手術800件)をクリアすれば届出可能なため、当院でも“25対1”の算定が可能」と話す。
 「100対1」も年間緊急入院患者数が100名以上の実績で算定可能なため、わが国の病院の多数派である中小民間病院でも、条件を満たせる要件緩和が行われたことになる。更に付け加えると、今回の改定で医師事務作業補助者(クラーク)の配置場所は、医師の指示に基づく限り問わない、要するに場所は病院内の何処でも構わないことが明記された。“敷居が低く”なったことにより、今後、同加算を算定する病院が急速に増えることが予測される。これまで中医協における診療報酬の議論を観測してきた専門誌記者は「委員の中からは慢性期の病院にも同加算を認めるべきとの意見もあったが、今回は見送られた」と指摘し「同加算がこれだけ重点評価されたのは、様々なデータを収集・分析した結果、実際に勤務医負担軽減のアウトカムが立証されたから」との見方を示す。
 今改定の目玉として注目したいのは、急性期看護補助体制加算1・2の新設。「急性期医療を担う病院の一般病棟で、勤務医、看護職員の負担軽減及び処遇の改善を目的に、看護業務を補助する看護補助者を配置する」体制を評価するもの。必要条件として「7対1入院基本料」及び「10対1入院基本料」の届出病院であることが前提だ。14日間が限度であるが、同加算1(50対1)は120点、同加算2(75対1)は80点が1日当たり算定出来る。
 また見逃してはならないのは、病棟において看護職員数が多く、余裕のある病院は看護師を看護補助者とみなしてカウントすることが可能な点。
 「“7対1入院基本料”を届出している医療機関は、既に看護補助者の人員に余裕のある施設が多いため、敢えてスタッフを増員しなくても、算定可能な病院が多い。点数的にも魅力が大きい」(医業経営コンサルタント)のが一般的な見方。
 更に急性期の入院医療を評価するものとして、「“10対1入院基本料”の届出医療機関において、患者の重症度・看護必要度を継続的に測定し、評価を行っていること」に対して、一般病棟看護必要度評価加算(1日につき5点)が新設された。当該病棟に入院した時点から評価時刻までの記録と観察を行い、院内研修等を受けた看護師が評価票に記載するのが要件。評価時間は一定の時刻で、毎日評価を行うことが必要だ。