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病院で胎動する新しいマネジメント・セクション

独立行政法人国立病院機構で 台頭し始めた経営企画セクション

 昔は民間病院において“患者を増やすこと”、特に「外来患者増」が重要な命題となった時期があり、「企画マーケティング室」や「企画調査室」といった部門が、設置されるという動きが多々見られました。特に老朽化した病院の移転・リニューアルという流れの中で、開発が進む郊外の人口増加地域に病院の新規開設が増え、病院側もマーケットにおける病院のポジショニングや他院との差別化・競合戦略を重視。一般企業のマーケティングや市場調査の経験者を、その任に就かせるというケースも見られました。ただここ数年は行政誘導により「病院は入院」「診療所は外来」という機能分化が進み、さらにクリニックの新規開業ラッシュもあり、病院の多くは“急性期医療の先鋭化”や“平均在院日数の短縮”、“DPC導入”等、入院機能の向上が最重要課題となり、新規外来患者獲得に従来ほど注力しなくなったという現実があります。そうしたトレンドに伴って、一部の大病院を除くとマーケティング室や企画調査室と言う部署は殆ど消滅しましたが、それに代わって台頭してきたのが、経営企画セクションです。
 2004年4月の独立行政法人国立病院機構の立ち上げに伴い、全国174(当時)の旧国立病院の全てにおいて、「経営企画室」を設置。赤字に苦しむ国立病院で、中長期的な経営戦略を担う新組織体制がスタートしました。もちろん各病院で“温度差”はあるものの、国立病院機構における「経営企画室」の役割は、病院内の意欲ある人材を集結して、経営トップに判断材料を提供するブレーン的な役割を担う部署として位置づけられてきたのです。ただ20名前後のメンバーの大半は医師、看護師、薬剤師らの兼業で、専従部門というよりも院内プロジェクトチームとして、役割・機能を果たしてきたと言えるでしょう。
 一方、中小規模の民間病院における新しいマネジメント・セクションの設置には、厳しい経営環境の中で“病院に差し迫った経営課題を早急に解決したい”という、より切実で具体的な動機付けがあるように思われます。ここでは2つの民間病院で「戦略部門」として機能する、新しいマネジメント・セクションの動きをご紹介します。

〔事例1・経営企画室〕〜医療法人A病院(200床)のケース
  新規事業を担うべく公的介護保険施行と同時にスタート

 地方都市のA病院は慢性期の高齢者医療と回復期リハを中心とした病院で、在宅医療に注力し数ヶ所の訪問看護ステーションや在宅医療をメーンとするクリニック、グループホームや有料老人ホーム等の高齢者介護施設を運営。病院を中心に各施設が有機的に連携し、地域に密着した医療・福祉活動を展開してきました。A病院に経営企画室が設置されたのは、公的介護保険制度が施行された7年前の2000年に遡ります。介護保険制度のスタートによって、在宅介護ビジネスの市場が拡大する中で、主に介護保険事業を中心とした新規事業の企画・プロモーションを担う部署として新設されました。経営企画室スタッフは現在5名で、経営企画室長は事務長が兼務し、5名のうち4名が兼務。言うなれば国立病院機構よりは小規模の、少数精鋭の院内プロジェクトチームとしての位置づけです。専従の女性スタッフ(Nさん)は、(当時)20歳代後半のMSWを抜擢。Nさんは早い時期にケアマネジャーの資格を取得しました。経営企画室の7年間の業務・実績は、グループホームと有料老人ホーム開設のためのマスタープランと地域ニーズの調査・分析、これら介護施設のスタッフ確保と営業(入居者集め)。さらに独自の患者満足度調査の作成と実施・評価、グループ全職員の医療・福祉・介護に関する教育の企画・立案、ホームヘルパー養成事業の実施、さらに日本医療機能評価機構の病院機能評価受審のキーパーソン〜等です。
 以上のように業務内容は極めて明確で、①公的介護保険に関連した新規事業全般②職種の垣根を越えた職員教育の企画・実施③「患者の視点」に立った諸々の病院改善活動④マーケティング・広報活動〜等が中心となります。昨今の病院経営企画室の特徴として、一般企業から人材を求めることが多いのに比べて、A病院の場合は5名のスタッフ全てが、病院の“生え抜き”で構成されているのが特徴です。同病院では新規事業として、在宅療養支援診療所と連携した高専賃(高齢者専用賃貸住宅)の地域展開を目指しており、経営企画室のスタッフはこれからの優先事項として、高専賃の企画立案・立ち上げに注力することになります。