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災害時のこころのケア
 ―心理支援,医療・福祉,生活支援―(Ver.1.0 2015.3)

3.安定化(必要に応じて)

目的:動揺・興奮している被災者の混乱を鎮め、見通しが持てるようにする。

 被災者がストレス反応を示しているときは、丁寧な観察により、どのような状態にあるのかを見極めましょう。いきなり話をするよりも、穏やかにそばに控えていることで、相手に落ち着くための時間を提供できます。
 支援が必要だと判断した場合は、当事者が周囲の現実との接触を取り戻せるように手助けします。また当面の見通しを伝えることも役に立ちます。もし一般的な方法では役立たないようなら、臨床心理士、保健師、保健福祉関係者、精神科医(支援ピラミッドの「③隣接する準医学的支援」や「④医学的支援」)に相談してください。薬物治療が必要かもしれません。投薬については、【災害時のこころのケア(手順書編)】15ページの「投薬の継続(薬の確保)」の欄を参照してください。精神科医がおらず、薬物治療がすぐにできない場合は、管轄の保健所や保健センターに連絡してください。緊急を要すると判断された場合には、保健師が中心となって精神科病院へ移送することになります。精神科病院への緊急移送については、【災害時のこころのケア(手順書編)】18〜19ページの「精神科病院への緊急移送」の欄を参照してください。

(例) こういうひどいことが起きたときには、誰か信頼できる友達や家族に支えてもらうことがとても大切ですよ。話をすると気分が楽になるようなどなたかがいませんか?

4.情報を集める−いま必要なこと、困っていること

目的:周辺情報を集め、被災者がいま必要としていること、困っていることを把握する。そのうえで、その人にあったPFAを組み立てる。

 被災者が必要としていることや、困っていることにあわせて、提供する支援内容を調整する必要があります。そのためには、十分に情報を集めなければなりません。ただし、トラウマ体験について詳細に述べてもらうことは、さらに苦痛を与えてしまいかねないので避けてください。既往の精神疾患・障害や服薬状況に関する情報収集については、【災害時のこころのケア(手順書編)】15ページの「投薬の継続(薬の確保)」の欄を参照してください。

5.現実的な問題の解決を助ける

目的:いま必要としていること、困っていることに取り組むために、被災者を現実的に支援する。

 被災者が必要とする手段や資源を提供することによって、被災者は「自分には乗り越えていく力がある」「なんとかなる」「自分を誇りに思う」などの感覚を高めることができます。そのためには、「達成可能な目標」を定めるように助言しましょう。小さな目標を一つずつ達成することによって、失敗感や事態にうまく対処できないというマイナス感情を軽くできます。また、成功体験を積み重ねることで「自分で状況をコントロールできる」という感覚を取り戻せます。

(例) いまお話くださったことから、○○さんにとっていますぐに必要なことは、ご主人の無事を確認することだということがわかりました。ご主人と連絡を取ることに集中しましょう。ご主人に関する情報を得るためには何をすればいいか、計画をたてていきませんか。

6.周囲の人々とのかかわりを促進する

目的:家族・友人など身近にいて支えてくれる人や、地域の援助機関との関わりを促進し、その関係が長続きするよう援助する。

 周囲の人々からの支え(ソーシャル・サポート)は、被災後の精神的な安定と回復に影響します。そこで支えになってくれる人に少しでも早く連絡を取るよう促すこと、周囲の人々とのつながりを作ってそれを維持できるよう支えることがきわめて重要になります。そうした人が身近にいない場合は、被災者同士、支援者など、今近くにいる人たちとの関係が活かせるように働きかけてください。ただし、被災後に自分の経験を話したくない人もいます。無理に話さなくてもいいこと、安心できる人と一緒に過ごすだけでも気持ちが楽になることを知ってもらいましょう。必要に応じて、PFA提供者が、肯定的でサポーティブな態度の見本を示しましょう。

(例) 避難所を出られてからも、あなたが安心できる人たちと一緒に過ごしてくださいね。今回体験したことについて話し合うことがあなたの心の安定に役立つと思うこともあるでしょうが、いつ何を話すかは、あなた自身が決めていいことなのです。すべてを話す必要はありません。それぞれの相手と共有したいと思うことだけ、話せばいいのですよ。

7.対処に役立つ情報

目的:苦痛をやわらげ、適応的な機能を高めるために、ストレス反応と対処の方法について知ってもらう。

 様々な種類の情報を得ることで、被災者はよりうまくストレス反応に対処し、効率よく問題に取り組むことができるようになります。具体的には、ストレス、トラウマ体験、喪失に対する一般的な心理的反応とその対処法(簡単なリラクセーション法、強い否定的感情や睡眠の問題への対処法など)について情報を提供しましょう。ストレスやトラウマ体験の心理的反応は、【災害時のこころのケア(手順書編)】3ページの「メンタルヘルス」の欄を参照してください。喪失の心理的反応は、領域B:初期の35〜36ページの「喪失体験による悲嘆」に詳細が載っています。

8.紹介と引継ぎ

目的:被災者がいま必要としている、あるいは将来必要となるサービスを紹介し、引継ぎを行う。

 避難所では対応しきれず、さらなる援助を必要とする被災者には、適切なサービスを紹介します。その際には、被災者が抱えている複数のニーズや現在の心配事のうち、どれに対する追加情報またはサービスが必要なのかをよく聞いてください。また、必要に応じて保健センター(もしくは保健所)と連絡を取り、スムーズな連携ができるために必要なこと(サービスを提供している機関の担当者のところに連れて行く、適切な紹介先を教えてくれそうな地域の代表に引き合わせるなど)をしてください。その際、被災者が自分は継続的にケアされているという感覚が持てるように工夫しましょう。福祉避難所へ誘導する場合には、【災害時のこころのケア(手順書編)】18ページの「福祉避難所」の欄を参照してください。 (【災害時のこころのケア(付属文書編)】 Ⅴ参照)