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災害時のこころのケア
 ―心理支援,医療・福祉,生活支援―(Ver.1.0 2015.3)

監修:筑波大学医学医療系精神医学 朝田 隆
(現 東京医科歯科大学 特任教授)

本書の目的

 大型災害発生の直後から数年以上に亘る時間経過の中で、被災者に必要とされるこころのケアは刻々と変化します。阪神淡路大震災を契機とし、東日本大震災に至って、被災者に対するこころのケアは復興支援に欠くことのできない構成要素として認識されるようになりました。しかし、新しい分野であるだけに、全体像が分かりにくく、個々の支援が必ずしも同じ方向を向いていないという指摘もあります。そこで、これまでの経験をもとに、今後起こりうる大型自然災害などを想定してなすべきこころのケアに関する実践ガイドを作成しました。

 筑波大学附属病院 精神神経科 「災害時のこころのケア ―心理支援,医療・福祉,生活支援―」
  URL: http://www.tsukuba-psychiatry.com/?page_id=981

 まず一読すれば、災害発生後、こころのケアとしてどの時点で何をすべきかを即時に理解できるように心掛けました。その一方で、被災者支援の全体的の中で、こころのケアがどのように位置づけられるのかがわかる資料となるように努めました。
 読者として想定したのは、まず被災地の自治体職員です。すなわち一般事務系の職員あるいは避難所となる学校教職員、そして保健師など医療・保健・福祉に関わる方々です。また精神医療サービスの主体となる現地の精神科病院や精神科クリニックの職員、そして県内外から被災地支援にかけつける精神医療関係者です。

全体の構成

手順書
 ・領域A 最初期(発災〜1週間)
 ・領域B 初期(1週間〜1ヶ月)
 ・領域C 中期(1ヶ月〜半年)
 ・領域D 長期(半年以降)
 ・領域X 精神科病院の対応のあり方

 本書は、手順書と付属文書の2分冊から構成されています。
   ・ 「災害時のこころのケア―心理支援,医療・福祉,生活支援―」手順書編(Ver.1.0 2015.3)
   ・「災害時のこころのケア―心理支援,医療・福祉,生活支援―」付属文書編(Ver.1.0 2015.3)

 手順書は、時間経過に沿って継起する事象と対応の概要を記述した基本的テキストです。必要となるケアの視点に立って、時間軸に沿って領域A〜Dの4つの領域に分かれています。また、領域Xとして、ケアの実施主体として大きな役割を担う精神科病院の対応のあり方についてまとめました。領域A〜Dの4つの時間区分は、災害発生後の時間経過の中で、被災者あるいは被災地にどのようなことが起こり、どのような支援が求められるかを基本として設定しました。被災地ごとに異なる可能性がありますから、4つの区分はあくまで目安を示したものと考えてください。

 各領域は、課題の見極めから対応の実際までが自然な流れとして理解できるように、「1.状況と特徴」、「2.対応に求められること」、「3.支援に関わる人と組織」の3部構成になっています。具体的には、発災後の時期ごとに、「1.状況と特徴」では、被災者の状況や支援体制の概要について説明しています。次の「2.対応に求められること」では、事象と対応に分けられます。事象とは、実際に起こり得ることです。この説明に続いて、それに対する対応策を提示しています。災害時には、時間的・資源的制約が強く、支援ニーズの全てに対応することは不可能です。そこで支援者には、有効に効果を発揮すると考えられる対応に優先順位をつけ、実施していくことが求められます。もっとも実際の対応は、個々の状況に応じて異なるのは当然ですから、本書にとらわれる必要はありません。「3.支援に関わる人と組織」では、対応する上で求められる具体的な活動内容や心構えについて、支援者の職種別に記述しています。なお、以上の流れを示すために、説明本文の前にオーバービューとして、全体像の概略図が入れてあります。

 一方で付属文書には、手順書に示した個々の支援に関して公表されている各種文書・情報から、取るべき行動の具体的指針となるものを抽出してあります。実際の対応を講じる上で、詳細な情報はが必要になった時に、この付属文書を参照してください。