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研究結果を読む際に

東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野
宮本有紀

 現在、医療保健福祉分野において、EBM(Evidence- Based Medicine)はキーワードであるとも言えます。EBMとは、「根拠(エビデンス)に基づいた医療」とも言われ、研究結果から得られた根拠を目の前の患者に適用するための方法論であり、EBMの実践には、(1)目の前の患者の問題を明確にし、(2)情報収集をして(3)それらを吟味し、(4)その患者に最適な情報を適用する、(5)その結果を評価する、という5つのステップがあると言われています。

1.Evidence-based mental health とは何か?

 Evidence-based mental healthとは、広義のEBMに含まれる考え方であり、Mental health (精神保健)領域においてなんらかの療法やプログラムを提供する、あるいは導入を決定する際に、現在ある最良の根拠に基づいてその実践を行うための方法論です。(表1) 先ほどのステップで考えると、(1)目の前の状況や、患者・利用者の状態を正確に把握し、自分が援助を行う対象である患者や利用者の問題、あるいは地域における問題を明確にして、(2)生じている問題に関する情報を収集し、(3)それらを吟味して最善の根拠を得ると同時に、(4)その患者・利用者に適用可能なのかどうかを考えて実践を行う、(5)行ったプロセスを評価する。これが根拠に基づいた実践の流れになります。

表1:「根拠に基づいた精神保健(Evidence-based mental health)」の流れの例
EBMのステップ 精神保健領域での例1 精神保健領域での例2
1: 問題の定式化
   どんな対象に
   何をすると
   何と比べて
   どうなるか
Aさん(50代男性)の重度のうつの改善のために投与する抗うつ薬はB薬とC薬のどちらがいいか? 入院中の中高年の慢性期統合失調症患者に対するプログラムDの導入は(従来どおりの入院治療と比較して)自立した生活に必要な能力を向上させるか?
2: 問題についての情報収集 上記について文献検索
3: 情報の批判的吟味 得られた文献を吟味
4: 情報の患者への適用 Aさんの希望や生活環境も考慮し、最適と思われる抗うつ薬を処方 効果的であることが示されており、その地域の文化にも合っているプログラムの導入
5: プロセスの評価 上記プロセスを評価

名郷直樹. EBMキーワード. 中山書店, 2005. を参考に作成