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より良い論文執筆とクリティカル・リーディングのためのガイドライン
『日常臨床に研究成果を活用するために』

2. 研究成果を適切に報告するためのガイドラインと研究法の対応

 研究成果を適切に報告するためのガイドラインは、様々な研究法に合わせて作成されています (表 1)。例えば、無作為化比較試験のメタ分析と、観察研究 (コホート研究、症例対照研究、横断研究) のメタ分析では、異なるガイドラインが用意されています。無作為化比較試験のガイドラインは、基準となるガイドラインが、具体的な研究法 (クラスター無作為化比較試験、非劣勢・同等性試験、実用試験) や、用途 (投薬、投薬以外、有害事象、抄録) に合わせて拡張されています。
 それぞれのガイドラインは、論文のタイトル、抄録、序論、方法,結果、考察に記載すべき情報を定義しています。例えば、方法の「例数設計」の項で、「どのように標本サイズを決定したかを記述する」ことなど、20項目程度、用意されています。
 また、一部のガイドラインは、ガイドラインの理解を促すために、実際に論文に掲載されている具体例と共に、その項目を執筆すべき理由など、詳細な説明が用意されています。さらに、一部のガイドラインは、日本語訳も完成されています。これらのガイドラインは、普及を促すために、すべて、オンラインで入手可能になっています。本論では、引用文献に全ガイドラインのURLを記載していますので御活用下さい。
 このようなガイドラインを、どのような時に選べばいいかは、図 2を参照して下さい。例えば、「ある病院に来院した患者のうち、厳格な適格基準に該当した者を連続的に登録し、新薬投与群とプラセボ投与群の2群に無作為に割り付け、新薬の方がプラセボよりも優れているかを検証する研究」があるとします。この研究を「抄録」のある学術誌に報告する場合は、図 2 を参照すると、表 1の「3、7、10」のガイドラインを選べばいいことがわかります。
 これらのガイドラインを利用する際に注意が必要な点は、研究を実施する前に、ガイドラインを確認することです。研究を実施した後に確認すると、取り返しがつかないことが出てきてしまうからです。可能であれば、先行研究を読む段階から、ガイドラインを確認することをお勧めします。

表1 研究成果を適切に報告するための主なガイドライン
研究法 研究法の具体例
項目
項目例
1. 無作為化比較試験のメタ分析 (QUOROM)4) 3-10の研究法を用いた複数の研究を系統的に収集する。そして、研究全体として、どのようなことが言えるかを評価する。 × 5) 18 方法の「量的データの統合」の項: 主な効果量 (e.g., 相対危険度)、効果量を統合する手法 (統計的検定と信頼区間)、欠損値処理の方法、統計的異質性の評価法、感度分析と層別分析の事前設定の根拠、出版バイアスの評価法を記述する。
2. 観察研究のメタ分析(MOOSE)6) 11-13の研究法を用いた複数の研究を系統的に収集する。そして、研究全体として、どのようなことが言えるかを評価する。 × 7) 35 結論の項: 研究で得られた結果について、他の解釈の可能性を述べる。
3. 無作為化比較試験(CONSORT, revised)8) ある新薬の効能を調べるために、患者を新薬投与群と従来薬投与群の2群に無作為に割り付け、効能を比較する。 9) 10) 22 結果の「評価と推定」の項: 主要評価項目と副次評価項目について、群ごとの要約統計量と、効果量及びその信頼区間を記述する。
4. クラスター無作為化試験(CONSORT, extension)11) ある新薬の効能を調べるために、複数の病院を無作為に2群に分け、Aグループの病院では 新薬を投与し、Bグループの病院では従来薬を投与し、効能を比較する。 × × 22 方法の「統計手法」の項: 主要評価項目について群間比較をするための統計手法で、クラスター化を考慮する方法を記述する。
5. 無作為化比較試験 (非劣勢・同等性試験) (CONSORT, extension)12) ある新薬が従来薬と比べ、劣っていないことまたは同等の効能があることを調べるために、患者を新薬投与群と従来薬投与群の2群に無作為に割り付け、効能を比較する。 × × 22 方法の「介入」の項: 各群に実施する介入の詳細、非劣勢・同等性試験で用いる標準治療は標準治療の効能が示された他の臨床試験と (ほぼ) 同様か、各群の介入をいつどのように実施するかを記述する。
6. 無作為化比較試験 (実用試験) (CONSORT, extension)13) 日常臨床に近い条件で、ある新薬の効果があるかを調べるために、患者を新薬投与群と従来薬投与群の2群に無作為に割り付け、効果を比較する。 × × 22 方法の「評価」の項: 選択した主要評価項目と副次評価項目及び追跡期間は、臨床試験の結果を利用する人にとって、なぜ重要であると考えられるかを記述する。
7. 無作為化比較試験 (投薬) (CONSORT, extension)14) (3と同様) 15) × 22 方法の「介入」の項: 薬剤の容量、使用期間、容量及び使用期間を決定する根拠を記述する。
8. 無作為化比較試験 (投薬以外) (CONSORT, extension)16) ある心理療法の効能を調べるために、患者を心理療法実施群と通常診療実施群の2群に無作為に割り付け、効能を比較する。 17) × 22 方法の「介入」の項: (治療者や施設により介入が異ならないよう) どのように介入を標準化したかを詳述すること。
9. 無作為化比較試験 (有害事象) (CONSORT, extension)18) ある新薬の有害事象を調べるために、患者を新薬投与群と従来薬投与群の2群に無作為に割り付け、有害事象を比較する。 × × 22 方法の「評価」の項: 考えられる有害事象を、各々の定義と共に一覧にする。
10. 無作為化比較試験 (学術雑誌と学会の抄録) (CONSORT, extension)19) (3と同様) 20) × 17 著者名の項: 連絡責任著者の連絡先を明記する。
11. 非無作為化試験 (TREND)21) ある新薬の効果を調べるために、患者を新薬投与群と従来薬投与群の2群に (無作為ではなく) 割り付け、効果を比較する。 × × 22 方法の「介入」の項: 治療遵守率を高めるために、どのような活動を行ったかを記述する。
12. 観察研究 (STROBE)22) ある新薬の有害事象を調べるために、新薬と従来薬を投与された患者を、初めて薬剤を投与された時点から数年間追跡し、有害事象の発生の有無を比較する。 23) 24) 22 方法の「例数設計」の項: どのように標本サイズを決定したかを記述する。
13. 診断精度の研究 (STARD)25) ある簡便な検査は、より複雑な標準的検査に近い精度の診断ができるかを調べるために、両検査を実施し、その診断精度 (感度・特異度など) を示す。 26) × 25 方法の「調査参加者」の項: 収集基準・除外基準、調査参加者をどこから募ったか、どこで検査を行ったかを明記する。

注) QUOROM = QUality Of Reporting Of Meta-analyses; MOOSE = Meta-analysis Of Observational Studies in Epidemiology; CONSORT = CONsolidated Standards Of Reporting Trials; TREND = Transparent Reporting of Evaluations with Nonrandomized Designs; STROBE = STrengthening the Reporting of OBservational studies in Epidemiology; STARD = STAndards for Reporting of Diagnostic accuracy。
※ 数字)の表記は、PAGE6 「引用文献」の文献番号です。


複数のガイドラインの選び方