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うつに対する認知療法の実際とその効果

4.認知療法のアプローチ

 図1のように、思考や気分、身体症状などの悪循環が生じている場合、どのようにアプローチしたらよいのでしょうか?Aさんの例に戻って考えてみましょう。「上司は自分のことを駄目なヤツだと思うに違いない」「もう、この仕事は任せてもらえないかもしれない」と考えて、気分の落ち込みや不安、焦りを感じているAさん。そこで、客観的に自動思考を見つめ直してみることにしました。「どうして自分はそう考えてしまったのだろう?」とその根拠をみつけます。すると、「最近は人に指摘されるまでではないが、つまらないミスが頻発している」ことを気にしていたことに気がつきました。

図2.認知療法のアプローチ

図2:認知療法のアプローチ

 次に自動思考とは違う考え(反証)を挙げていきます。「もし他の人が同じ問題で悩んでいたら、なんとアドバイスするだろう?」などと第三者の視点から考え直してみたり、「過去に同じような悩みを持ったことはなかったか?今回に生かせる方法はないか?」とうまく乗り越えた経験を顧みたりします。また、「見逃していることはないだろうか?」などともう一度冷静に状況を捉え直してみます。すると、「自分を駄目なヤツだと全否定しても解決にならない。上司の指示を十分に把握できないままに仕事をしたのがミスのきっかけだ。改善方法を具体的に検討して、次に生かす方法を考えよう。そもそも、上司は仕事全体の流れを把握、管理するのが仕事であり、ミスを指摘したのは仕事上の役割だからだ。私を個人攻撃したわけではない。初期の段階で指摘してもらえたお陰で、大事に至らずに済んだ。」という反証が挙がりました。このことから、「自分をダメだと全否定せずに、同じミスを防ぐような具体的な方法を検討して対策を立てよう」(適応思考)と考えて、落ち込みや不安、焦りが少し軽減しました(図2)。
 認知療法では、様々な視点から状況を捉え直して、考えのレパートリーをひろげることに重点を置きます。しかし、一人でこの作業をするのは難しいこともあります。その場合には、精神科医やカウンセラーなどと問題を話し合ったり、自動思考記録表というワークシートに記入しながら状況を客観的に眺めていきます。最近では、グループで認知療法を行い、他者の発言を参考にしながら考え方のレパートリーをひろげていくこともあります。