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うつに対する認知療法の実際とその効果

国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部
東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
田島 美幸
東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野
宮本 有紀

1.認知療法とは

 認知療法は、ぺンシルバニア大学精神科のAaron T Beckにより考案され、認知のあり方―ものの見方や考え方―を変えることにより、抑うつ感や不安感を和らげることを目的とした短期の精神療法です。うつ病をはじめ様々な精神疾患に対する治療的効果が確認されており、アメリカ精神医学会の治療ガイドラインでは、軽度から中等度のうつ病の第一治療選択の一つとされています。また、中重症度のうつ病に対しても、認知療法と薬物療法の併用で効果が確認されています。

2.認知療法の相互作用モデル

 認知(頭のなかに浮かぶ考えやイメージ)、行動、気分、身体症状は、相互に影響し合い作用しています。認知療法は、なかでも「認知」に焦点をあててアプローチします(図1参照)。気分が落ち込み、不安な時には、状況を悲観的に捉えやすくなります。例を挙げてみましょう。Aさんは仕事でちょっとしたミスをしてしまい、上司に指摘されました(状況)。心臓がドキドキして、胃が痛くなり(身体症状)、深く落ち込み、不安や焦りを感じました(気分)。また、ミスを指摘されてしばらくは仕事に集中できなくなりました(行動)。この時、Aさんはどんなことを考えていたのでしょうか?ある状況で、気分と共にほぼ瞬間的に頭に浮かんでくる考えやイメージを 認知療法では「自動思考」と呼びますが、この自動思考を探っていきます。「あんなミスをしてしまって、上司に駄目なヤツだと思われたに違いない」「もう、この仕事は任せてもらえないかもしれない」「自分は何をやってもうまくいったためしがない」「自分には能力がないのではないか」・・・と自動思考が連鎖し、ますます気分が落ち込み、不安になるという悪循環が生じます。

図1 認知療法の相互作用モデル

  この自動思考は、スキーマというその人の中核的な信念に影響されるといわれています。Aさんは、「私は何をやっても、いつもうまくいかない」という考えが強いため、少しのミスでも落ち込みや不安を強く感じています。