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生活技能訓練(SST)の実際とその効果

4.SSTの効果

1) 我が国におけるSSTに関する研究

 SSTに関する文献は、SST導入に際して、あるいは実施するにあたっての留意点をまとめたものや、SSTに関する研究の報告などが我が国でも多数発表されています。
 SSTを行った人々の対人関係や生活技術、生活行動などの社会機能が向上したというような報告が多数なされています。しかし、わが国においては、SST の効果に関して、(ランダム化されていない)比較研究は見られるものの、ランダム化比較試験による研究はまだ数少ないというのが現状です。
 我が国におけるSSTのランダム化比較研究としては、2002年にAnzaiらが発表した研究において、統合失調症の入院患者32名をSST群(社会生活問題解決モデルの地域への再参加モジュールを行う群)と作業療法プログラムを行う群にランダムに割り付け、結果を比較したところ、SST群でより退院が促進され、服薬自己管理および症状自己管理に関する知識およびスキルが向上し、1年後のフォローアップ時にもこの効果が認められていたとの結果が報告されています。

2)欧米でのSSTに関する研究

 SSTに関する研究がすでに1970年代から行われていた欧米では、SSTに関する研究は我が国に比べてかなり進んでおり、SSTの社会機能に与える効果に関する研究も活発に発表されてきました。そのような過程があり、近年の欧米におけるSSTに関する研究は、SST(基本訓練モデルやモジュール)の単独の効果を示すと言うよりは、例えば認知面への働きかけも組み合わせたSSTの効果を研究する、というようなものが増えています。

3)SSTの実証的効果研究の紹介

 ここで、SSTの実証的効果研究を一つご紹介します。上で述べたように、欧米ではSSTに関する研究が変化してきているため、ここでご紹介する論文は少し古いものとなってしまいますが、SSTの効果に関して1998年に発表された、Libermanらによる有名なランダム化比較研究です[研究紹介]。
 この研究は統合失調症外来患者をSSTを実施する群と心理社会的作業療法を実施する群にランダムに割り付け、どちらの群も6ヶ月間にわたって週4回(1 回3時間)の介入を行ってその効果を測定しました。その結果、SST群はIndependent Living Skills Survey (自立生活技能を測定する尺度)の得点が向上していました。この尺度は、日常生活での技能の使用を反映すると言われているため、SSTは、(検査得点だけでなく)実社会で用いる社会生活技能が実際に改善されたと結論されています。
 この研究では、SSTが社会機能の改善に効果的であるという結果の他に、SSTによって向上された技能の維持(持続性)も心理社会的作業療法群と比較して優れていたこと、SSTは特別な専門家でなくても効果的に実施することができたという結果が示されています。